2009 Fiscal Year Annual Research Report
結晶場効果を取り入れた相対論的バンド計算による二酸化アクチノイドの電子構造の解明
Project/Area Number |
19540372
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
眞榮平 孝裕 University of the Ryukyus, 理学部, 准教授 (20372807)
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Keywords | 二酸化アクチノイド / 相対論的バンド計算 / 結晶場 / f電子系 / 電子相関 / 磁性 / 超ウラン化合物 / j-j結合 |
Research Abstract |
アクチノイド化合物の基礎物性を理解するために、蛍石構造をもつ二酸化アクチノイド化合物を典型物質に選び研究を進めた。第1段階としては、酸素のp電子から成る伝導電子バンド構造や、アクチノイドイオンの5f電子と酸素の2p電子の混成の仕方が、アクチノイドイオンによってどのように異なるのか(あるいは異ならないのか)を明らかにするために、相対論的バンド計算方法に従い、UO_2、NpO_2、PuO_2さらにはAmO_2も含めて、電子構造やフェルミ面の系統的比較を行った。その結果、局所密度近似(LDA)法を基礎とするバンド計算では、アクチノイドイオンの原子番号が大きくなるにっれ、5f電子と酸素の2p電子の混成の仕方は大きく、金属的な電子構造となり実験結果と大きく異なることがわかった。なお、参照物質として、5f電子が物性に寄与しないThO_2に対しても同様の計算を行った。ThO_2はアクチノイドに起因する6d-7sの空バンドと酸素の2pに起因する価電子バンドとの間に、約5eVのギャップを持つ絶縁体であり、実験結果を合理的によく説明した。 AnO_2の解析の結果、LDAを基礎とするバンド計算では、Γ8とΓ7の対称性の順序が逆転してしまうという問題があることがわかった。アクチノイドイオンの波動関数の空間分布を考えてみると、クーロンエネルギーで損をしないΓ8が基底状態になり、Γ7が励起状態になるはずであるが、LDAの下でのバンド計算では、Γ8とΓ7の順序が逆転した結果となってしまう。そこで、この様な矛盾が起こらないようLDA法に結晶場効果を陽に取り込む"LDA+CEF法"を開発し、AnO_2の電子状態の理解を進めた。さらに、AnO_2の電子状態を微視的観点から理解するため、電子模型構築と解析を進めた。この電子模型は、強束縛近似によるf-およびp-電子の遍歴項と混成項、f-電子間相互作用項、そして結晶場項からなり、Slater-Kosterとしては、(ffσ),(fpσ),(fpπ),(ppσ),(ppπ)の5つを考えている。その解析の結果、(fpπ)の絶対値を小さくとるか、あるいは(fpπ)>0にすると、Γ8がΓ7の下にくるようになり矛盾がおこらない。Γ8とΓ7は(fpπ)について敏感に変化することがわかり、LDA+CEF法によるAnO_2の電子状態の解析において、重要な意味を持っことがわかった。また、NpO_2におけるNpイオンと酸素イオンの間の跳び移り積分(pfσ)と(pfπ)に関して、(pfπ)が非常に小さいときに実験で観測される八極子秩序相が現れるという指摘がある。それについては、バンド計算結果との比較により、NpO_2において(pfπ)が本当に小さくなるのか、どうして小さくなるのか、などのさらに詳細な検討を行う必要がある。今回の解析に用いたLDA+CEF法は、アクチノイド化合物の電子状態を考える上での1つの方法として、有効であると思う。
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Research Products
(6 results)