2007 Fiscal Year Annual Research Report
デラフォサイト型三角格子磁性体における磁気フラストレーションと誘電分極
Project/Area Number |
19540377
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
満田 節生 Tokyo University of Science, 理学部物理学科, 准教授 (90183962)
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Keywords | マルチフェロイック / 磁気フラストレーション / スピン流モデル / デラフォサイト型三角格子 / 誘電分極 / スピンヘリシティ |
Research Abstract |
デラフォサイト結晶構造を持つ酸化物CuFeO_2は、Fe^<3+>磁性イオンがなす三角格子面がc軸に積層した三角格子反強磁性体であり、そのスピンフラストレーションに起因する多彩な磁気秩序相が磁場誘起・微量希釈誘起され、さらには磁気弾性効果を通して各磁気秩序相に応じた格子歪みが生じる系である。2006年に、基底状態4sub相から第1磁場誘起相として出現する強誘電相が発見されてから、ノンコリニアーな磁気構造が電気分極を誘起するマルチフェロイック物質として交差相関物性研究の場でも興味が持たれ始め、従来の交換磁歪の機構に加え、最近提唱されたスピン流の機構も念頭に置き、この系の交差相関の起源の解明を目指し本研究を開始した。微量希釈によりゼロ磁場で強誘電相が出現する試料を用い、7Tを超える横磁場中性子回折実験の困難を回避して磁気構造を決定したところ、[110]方向に波数q〜0.207の磁気変調を持つプロパーヘリカル磁気構造であることが判明し、RMnO_3(R=Tb,Dy)をはじめとするサイクロイドらせん磁気構造を持つマルチフェロイック系の自発分極を良く説明してきたスピン流の機構が適応できないことが判明した。引き続き、JRR3における偏極中性子回折実験により、スピン流モデルではサイクロイドらせん軸と垂直方向に分極が誘起されることと対照的に、プロパーヘリカル構造の[110]らせん軸と平行に分極ベクトルが生じていること、スピンヘリシティに対応して分極ベクトルの極性も反転することを実験的に証明し、マルチフェロイックCuFeO_2では、ノンコリニアーなスピン対によるスピン流が作り出す誘導電場により電気分極が起こるスピン流モデルではなく、極最近、有馬により提案されたmetal-ligand間のd-p hybridizationに起因する機構が本質的であるという理解に至って居る。
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Research Products
(10 results)