2010 Fiscal Year Annual Research Report
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19540381
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
米満 賢治 分子科学研究所, 理論・計算分子科学研究領域, 准教授 (60270823)
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Keywords | 有機導体 / 電荷秩序 / 光誘起相転移 / 絶縁体金属転移 / クーロン相互作用 / 電子格子相互作用 / 量子干渉 / 絶縁破壊 |
Research Abstract |
2次元1/4フィリングの有機導体で電荷秩序を有し、光誘起融解ダイナミクスがよく調べられているα-(BEDT-TTF)_2I_3の初期過程に注目した。電荷秩序を安定化するのに最も重要なのはクーロン相互作用である。光照射後数百フェムト秒の時間スケールでは分子配置の変化に対応する格子振動との結合が見えていた。光照射直後数十フェムト秒で、相関をもつ多電子の運動と分子変形に対応する分子振動が見えることがわかった。これは分子間の電子移動と分子振動の励起が同程度のエネルギーで起こるためであり、これらが量子的に干渉してファノ反共鳴を起こす。異方的三角格子上の拡張パイエルス・ハバード模型に分子振動とのホルシュタイン結合を加えて計算した。多電子-フォノン系の厳密な波動関数の時間発展から、この干渉挙動を求めて実験結果とよい一致をみた。光照射は分子間の電子移動を駆動し、分子振動を励起する。これらの位相が逆になって弱め合った後に分子振動に相当する周期で電子が分子間で揺さぶられる。これらの位相がずれた後に金属への相転移が起きる。光照射前の電荷秩序を主に安定化しているのはクーロン相互作用だが、分子振動との結合もかなり安定化に寄与していることがわかった。 絶縁破壊による非線形伝導機構として、ランダウ・ツェナーの議論したものと、一方の金属電極から物質の準位を通して他方の金属電極に電子が移動するものがある。これらは本来、違う現象である。これらの関係を見るため非平衡グリーン関数法を用い、絶縁体と金属電極の結合を顕わに取り入れて電流電圧特性を計算した。
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