Research Abstract |
アスペリティの連鎖・連動破壊がどのような場合に生じるのかを調べるために,主として岩手県直下の小繰り返し地震の複数のクラスターが密集している領域について解析を行った.その結果,下記のことがわかった. 1)比較的規則正しい地震クラスターでも,再来間隔が短くなる時期があり,そのときは滑り域サイズは変化しないが,すべり量が変化している. 2)1サイクル中の地震性すべりと非地震性すべりの比は,クラスター毎にほぼ一定である. 3)複数のアスペリティが明らかに連動破壊している場合があり,その場合にはスペクトルにコーナー周波数が二つ現れ,高周波側のコーナー周波数が単独のアスペリティのサイズを示している. また,大きな余効すべりが押し寄せたときの小アスペリティの挙動について,シミュレーションと観測で確かめた.シミュレーションによれば,(a)浅部の小アスペリティの場合,普段は頻繁にスローイベントが生じるが大きな余効すべりが押し寄せると地震性すべりが生じるのに対し,(b)深部の場合は,普段から地震が周期的に発生しているが,大きな余効すべりが来ると,普段と違うすべり量分布のイベントが生じることがわかった.宮城県沖の海岸に近いM6の地震の近傍の小繰り返し地震のクラスターを詳細に調べたところ,大きな地震が発生した直後だけ,波形の相関が非常に悪くなっていることを発見した.これは上記の(b)で説明できると考えられる. また,釜石沖の予想されていた地震が,予測期間範囲内の2008年1月11日に予想通りの位置・規模で発生した.詳細な解析の結果,過去と同一の場所が滑ったことが明らかになった.
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