Research Abstract |
海洋堆積物や変質海洋底玄武岩にホウ素が濃集することに着目し,島弧火山岩マグマが生成する深部マントル物質に海洋プレートの沈み込みによる影響がどれだけ及んでいるかを見積もった,調査対象は九州本土全域の新生代火山岩試料で,地殻の混染の影響が少ない玄武岩,安山岩を選んだ.主成分元素,微量元素の分析は蛍光X線法で行い,ホウ素や他のいくつかの微量元素は原子力研究開発機構(東海)の原子炉を用いた即発ガンマ線分析で行った.ホウ素は試料準備過程における汚染が起こりやすいので,非破壊の本分析法を採用した.昨年度研究計画の目標は九州における西南日本弧の火山岩のホウ素濃集度の時間的,空間的マッピングを行って全体の傾向を知ることである. ホウ素は深部海洋プレート由来の流体相によってマントル物質に付加するが,部分溶融や結晶分化作用による濃集の効果を考慮する必要がある,同時に分析したニオブやサマリウムなどの元素は部分溶融や結晶分化作用時の挙動が同じで,それらの効果を相殺してくれるので,実際の沈み込み成分マッピングはB/NbやB/Sm比で行った. 本年度は島弧縦断方向の変化に着目して調べた.姫島,由布鶴見,鬼箕,北部九州の火山は沈み込み成分が非常に少ないのに対し,阿蘇,霧島,桜島,開聞など南部九州の火山は沈み込み成分が多いことがわかった.これは沈み込むフィリピン海プレートの年代と関連づけられる.北部九州では若い年代のプレートが沈み込んでいるのに対し,南部九州は古い年代のプレートが沈み込んでいる.両者の境をなす九州パラオリッジが沈み込む阿蘇,霧島火山は特に沈み込み成分が顕著である.若いプレートは比較的熱いために,火山弧の直下,約100kmの深さに達する前に沈み込み成分が失われてしまうことで説明が可能である.
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