Research Abstract |
白色有機EL素子は,テレビ用ディスプレイや,液晶ディスプレイ用のバックライトや,薄型平板照明などに利用できる。消費電力が少なく軽量でフレキシブルという利点がある。この多波長発光有機EL素子用材料の開発研究に取り組んだ。先ず,従来から用いられている赤,緑,青の3色または2色の有機EL材料を混ぜ,各々の分子から独立して発光させる方法に取り組んだ。その一つとして,青色発光するホール輸送材料TPDに高効率緑色発光のIr(ppy)_3と赤色発光PtOEP燐光分子をドープした材料で白色発光を得た。TPDホストからのIr(ppy)_3およびPtOEPドーパントへのエネルギー伝達機構を明らかにした。さらに,SimCPやmCPやCBP蛍光材料ホストにFIrpiqやFIrN4燐光分子をドープした薄膜の発光特性を調べ,蛍光材料の燐光発光機構を明らかにした。 上記の多種類の分子を混ぜる方法に加えて,一つの分子から多波長発光を得る研究に取り組んだ。異なる材料の混成は,早い劣化を招き,安定性に問題があり,また材料費コストが高くなるからである。複数の異なる配位子分子をもつ一つの有機金属錯体から,それぞれの配位子からの異なる発光を取り出すことに成功した。その一つとして,Ir(ppy)_3がもつ3つのppy配位子の内,一つをキノリン分子に置き換えたIrQ(ppy)_2を合成して,540nmの緑色と660nmの赤色発光を得た。このmixed-ligandイリジウム錯体の光物性と10-300Kの温度範囲で測定しその性能を評価した。また,有機EL素子を作製しEL発光特性を調べ,励起発光緩和機構を明らかにし,このようなmixed-ligand金属錯体が白色化に有望であることを実証した。
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