2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19560066
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高田 滋 京都大学, 工学研究科, 准教授 (60271011)
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Keywords | 気体分子運動論 / 分子気体力学 / ボルツマン方程式 / 相変化 / 真空 / 対称性 |
Research Abstract |
本年度の研究で新たにあげられた成果は次のとおりである: (1) 2つの進行膨張波間における真空領域の形成過程を数値的に詳細に調べた.その結果,古典的な完全流体の等エントロピー理論において気体密度が有限にとどまる領域(これを膨張波部分とよぶ)では,気体の振舞いは時間的に古典論による膨張波の構造に移行することが確かめられた.一方,古典理論で密度がゼロとなる領域(これを真空領域とよぶ)では,気体密度は時間的にゼロに移行するが,その過程は極めて非平衡で,著しく非等方な温度(平行温度と垂直温度の違い)がみられることが明らかになった.この非等方性は進行膨張波の相対速度が大きいほど強い.また,膨張波部分の裾部では温度がゼロになるにもかかわらず,真空部分での温度は時間的に有限にとどまることが確認された (2) 線形化方程式に関する対称性の一般論を非定常系に拡張することに成功した.この拡張は,擾乱の伝播速度が有限であることを考慮して,極限操作の順序に左右されずに定常系と整合的な理論系構築できる有限領域でまず確立した.これは,分子運動論の立場から,非平衡熱力学におけるオンサーガの相反定理,非平衡統計力学における線形応答理論,および非平衡系の流体力学の間に,統一的視点を新たに1つ確立したことを意味する.また,同一のチャネル内の4種類の非定常基本流問題を考え,それらの数値シミュレーションを行って,本研究による新理論が予測する対称的な関係が成り立っていることを実証した
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Research Products
(4 results)