Research Abstract |
純アルミニウムの箔材に熱処理を施すことによって得られる粗大結晶粒(大きさは50mm-100mm程度)から, 試験片を取り出した. この際, 電解研磨によって100-30μm程度に板厚を変化させ, 複数の短冊状試験片を準備した. ほぼ単一すべりで変形するような結晶方位に対して, 引張試験, マイクロ曲げ試験を実施した. 曲げ試験については, 曲げ・曲げ戻しの反転試験を実施した. その結果, 引張り試験では, 箔厚が薄くなると降伏応力のみが上昇し, ひずみ硬化係数に対しては寸法依存性が見られなかった. 一方, 曲げ試験の場合には, 箔厚が薄くなるにつれて, ひずみ硬化量の著しい増大が確認された. さらに, 反転曲げ試験では, 反転後の降伏応力が小さくなるいわゆるバウシンガー効果が明確に認められた. この曲げ試験におけるひずみ硬化の寸法依存性とバウシンガー効果は, 前年度までに提案した高次ひずみ勾配理論の基本的枠組みの妥当性を直接的に証明するものであり, 世界に先駆けた成果である. 引張り試験における降伏応力の寸法依存性のモデル化は, 平成19年度において未解決の点であった. 今年度, 試験片サイズと活動転位源寸法の影響, ならびに転位の自由移動距離と転位生成速度の影響に関する検討を行ったが, 降伏応力における寸法依存性の主要因特定の決め手が実験結果から得難いために, これについては, 今後の課題として残される. 上記と同様な方法で, 無酸素銅箔についても引張試験と曲げ試験を実施した. 銅箔(厚さ40-20のμm)場合, 引張試験における降伏応力の寸法依存性は認められなかったが, 曲げ試験においては, アルミニウムにおけると同様にひずみ硬化度合の箔厚依存性が認められた.これらの結果は, 同じFCC金属でも, 寸法効果の現れ方に差があり得ることを示唆しており,さらなる実験データの蓄積が必要であることが判明した.
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