Research Abstract |
【高Re数TVFの速度計測法の確立と不安定要因およびカオス混合解析への応用】 (1)混合状態の可視化法の確立 アスペクト比Γ=3において最も安定な正規2セルモードと正規4セルモードをレーザーシート光により可視化した.この状態においてRe(Reynolds数)=400に設定し,外円筒上部から蛍光粒子を投入して混合状態を観察した.これより,Re<400(低Re数)では,渦内部まで蛍光粒子が拡散混合されるためには相当の時間を要することがわかった.このように混合が起こりにくい領域があることは,従来から孤立混合領域として知られていたが,TVF(Taylor渦)の特徴である乱流へのスペクトル遷移に呼応して混合状態も不連続的に変化すること,並びに渦の振動形態がモードによっても異なり,例えば渦自身が自励振動する場合と渦間の界面振動が支配的な場合など,多種のカオス的な振動形態が存在することが今回明らかにされた.これらの知見から,粒子の分離濃縮を容易にできる方法も新たに模索できるとも考えられる.イオン電気伝導度計等を使用した混合状態の定量評価も実施したが,流れに対するプローブの影響を無視することができず,現在実験を継続中である. (2)速度分布計測法の確立(UVP法とパルサーレシーバー法) 低Re数(Re<400)での孤立混合系では拡散混合は容易には起こらないが,乱流へのスペクトル遷移の過程において,ある臨界Re数を超えると,たちまち渦同士の界面,あるいは渦自身が自励振動し始め,速やかな混合が行われることを前述した.そのメカニズムはカオス的であり,詳細な測定法が望まれた.この背景から今回,UVP(Ultrasonic Velocity Profiler)による計測実験を実施した.一例を報告すると,内円筒半径50mm,外円筒半径75mm,Γ=3(75mm)の正規2セルモードにおいて,鉛直方向速度成分を軸方向1024点分割して測定し,速度成分の周波数とパワースペクトルを測定した.Re=700では,約1.2Hzにシャープなスペクトルが発生し,Re=900では1.7Hzにシフトして数本のスペクトルに分岐した.これらの周波数モードが界面から発生するか渦自身の自励であるかを二次元時空間解析から鮮明に判断することができた.本結果より,UVPによってカオス混合の高精度計測が一層進むと期待される.
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