2008 Fiscal Year Annual Research Report
汽水湖の塩分成層と栄養塩循環の構造解明とその予測モデルの開発
Project/Area Number |
19560507
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
信岡 尚道 Ibaraki University, 工学部, 准教授 (00250986)
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Keywords | 汽水湖 / 水質 / 生態系数値モデル / 栄養塩 / 成層 / 植物プランクトン / 底泥 |
Research Abstract |
貴重な天然の汽水湖として残っている茨城県涸沼の中央部において沈降する懸濁物の成分として, 窒素, リン、炭素と植物色素を流速測定と合わせて中層と下層で調査して次のことを明らかにした。涸沼における懸濁物の量は, 淡水と塩水の混合期, 成層期によらず, 中層よりも下層で大きくなる傾向であった. 混合期では植物プランクトンが懸濁物に占める割合が17%と見積もられ, POP, POC, PPのほとんどが植物プランクトンに由来すると考えられた. 他方, 成層期では植物プランクトンに由来する割合が1/3に低下し, さらに有機物量の含有率が高かった. これは上中層での植物プランクトン由来の懸濁物が成層により湖底まで沈降しにくいこと, 成層下の流速がそれから上よりも相対的に速かったことから底泥や浮泥の巻き上がりが起こり, 有機物量が高くなると考えられた. 水質数値モデルの開発では, 植物プランクトンの再現性を高めるために最適増殖水温が異なる代表的な3種の導入, リンの再現性に着目し涸沼の中で大きな資源量割合を占めるヤマトシジミの導入したものを用いた. しかし, 懸濁物による沈降速度に自重の効果を入れているため, 上で挙げた成層期の懸濁物の鉛直分布の再現ができていないため, リンの再現性が十分にはできなかった. このことは, 成層の再現を高める手法を用いた数値モデルでも同様であった. 以上より, 涸沼のようなたかだか水深が3m程度の汽水湖でも成層効果が大きいと言え, 懸濁物の沈降現象を含めた成層界面での物質移動の詳細を解明していくことが, 汽水湖の栄養塩循環を予測する上で重要な点であることを示した.
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Research Products
(1 results)