2008 Fiscal Year Annual Research Report
新規クラスレート半導体の創製と熱電変換材料への応用に関する研究
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19560713
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Research Institution | Tokyo University of Science, Yamaguchi |
Principal Investigator |
阿武 宏明 Tokyo University of Science, Yamaguchi, 基礎工学部, 准教授 (60279106)
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Keywords | 省エネルギー / 熱電変換 / クラスレート / ゲスト置換 / ホスト置換 / 電子構造変調 / 状態密度 / ゼーベック係数 |
Research Abstract |
本研究では、熱電変換材料としての実用化を目指して、高い熱電性能を有する新規クラスレート半導体の創製に関する基礎的研究を行う。平成19年度の研究結果を踏まえ、材料プロセス、ホスト・ゲスト元素置換効果、バンド構造計算に基づく熱電物性解析を引き続き行った。SiやGe系クラスレートにおいて、遷移金属元素によるホスト置換および希土類元素によるゲスト置換した場合の電子構造計算の結果から、ホストおよびゲスト置換のいずれも伝導帯底付近の構造が影響を受けて状態密度が増加すること、その結果ゼーベック係数が増加する効果が期待されることが判明した。Geクラスレートの場合の計算から、ゲスト原子のイオン半径が小さくなる程、状態密度の増加効果が大きいことが示唆された。これらを実験検証するために、ホストを遷移金属元素で置換した化合物系におけるゲスト置換試料を作製し熱電特性を評価・解析した結果、n型Ba_<8-x>Eu_xCu_ySi_<46-y>系とn型Ba_6A_2AuGa_<13>Si_<32>(A=Sr,Eu)系において、ゲスト置換によって有効質量が増加することがわかった。Ba_6A_2AuGa_<13>Si_<32>(A=Sr)系において熱電特性のキャリア濃度依存性をシミュレーションした結果、キャリア濃度を最適化すれば熱電性能が高温側で向上することが予測された。以上のように、従来までクラスレートにおいてはゲストの“ラトリング"散乱が低い熱伝導度の主因とされ、ゲストとフォノン物性との関係が重視されてきたが、本研究から、ゲスト元素置換によってもキャリア輸送を担う電子構造を変調して熱電物性の制御が可能であることが明らかとなった。
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