2007 Fiscal Year Annual Research Report
ホンヤドカリ属における性成熟後の成長と繁殖の資源配分
Project/Area Number |
19570012
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
和田 哲 Hokkaido University, 大学院・水産科学研究院, 准教授 (40325402)
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Keywords | 資源配分 / 成長 / 繁殖 / 甲殻類 |
Research Abstract |
ホンヤドカリ属のメスは交尾直前脱皮をおこなう。これまでの研究で、本属5種7個体群で、交尾直前脱皮は産卵回数を減らすために現在の繁殖成功度を下げるものの、成長を介して将来の繁殖力を高めていると考えられている。つまり本属のメスは繁殖期中にも成長と繁殖の資源配分をおこなっていると考えられる。本研究では、同一個体群の複数年間、緯度の異なる個体群間、同じ場所に生息する同属種間、緯度の異なる地域の同属種間という複数レベルで、メスの資源配分様式を比較し類型化することを目的としている。さらに、各レベルで資源配分に影響を与える要因を個体レベルで検証することによって、個体群特異的、種特異的、地域特異的、そしてホンヤドカリ属に普遍的な資源配分様式を明らかにすることを目指す。 今年度は、ホンヤドカリ、イクビホンヤドカリ、ヨモギホンヤドカリ、ケアシホンヤドカリの交尾前ガードペアを野外で採集後、交尾・産卵まで飼育して交尾直前脱皮の有無と産卵の連続性、体サイズ、クラッチサイズ、貝殻の種類とサイズを測定した。そして交尾直前脱皮頻度と連続産卵頻度、それらの季節変動パターンを過去のパターンと比較した。その結果、土佐湾では共存種間で資源配分パターンに類似性が認められたが、函館湾ではその傾向は認められず、また函館湾のメスの資源配分パターンは年間変動も大きいことが明らかになった。さらに、ホンヤドカリの成長フェノロジーを函館湾と土佐湾で調べて比較した結果、函館湾では冬季に脱皮頻度が大きく低下して成長が停止するが、土佐湾では1年を通して高い脱皮頻度を保っていた。このことは、土佐湾のホンヤドカリに比べて、函館湾のホンヤドカリは成長可能な季節が短く、成長期における繁殖期の占める割合が高いことを意味し、繁殖期中の成長と繁殖の資源配分が生涯繁殖成功度に与える影響は、函館湾個体群のほうが土佐湾個体群よりも強いことが示唆される。
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Research Products
(2 results)