2008 Fiscal Year Annual Research Report
ホンヤドカリ属における性成熟後の成長と繁殖の資源配分
Project/Area Number |
19570012
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
和田 哲 Hokkaido University, 大学院・水産科学研究院, 准教授 (40325402)
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Keywords | 甲殻類 / 繁殖生態 / 脱皮 / ヤドカリ / 種間比較 / 配偶行動 |
Research Abstract |
高知県土佐湾と北海道函館湾にほぼ同所的に生息するが、メスの年間産卵回数や産卵期が異なるという特徴をもつホンヤドカリ属(テナガホンヤドカリ、クロシマホンヤドカリ、ホンヤドカリ、イクビホンヤドカリ、ヨモギホンヤドカリの5種6個体群)を用いて、メスの資源配分様式(脱皮頻度や産卵数、産卵間隔の関係)とオスがメスの体サイズに基づいた配偶者選択をおこなっているという仮説を検証した。メスが産卵期中にも脱皮をおこない、産卵間隔を延長させながら成長に資源配分している種では、体サイズと産卵数の相関が弱く、メスが脱皮をおこなわない種では、体サイズと産卵数の相関が強かった。前者の種では、メスの体サイズに基づいたオスの配偶者選択を強く支持する結果は現在のところ得られていないが、オスの体サイズやメスの産卵タイミング、さらにメスの体サイズ変異幅が小さいことなどの要因に対する解析処理が貧弱である可能性も示唆された。後者の種では、オスは大型のメスを高頻度で選択する傾向が認められ、さらに、メスを獲得しているオスが、より大型の成熟メスと出会った場合に、メスを取り替える行動も観察された。オスによる体サイズに基づいた配偶者選択が進化・維持される条件として、メスの体サイズが繁殖力の信頼できる指標として機能していることが挙げられる。メスの資源配分にみられる種間変異はオスの行動の種間変異を導く可能性が示唆された。また、ホンヤドカリの2個体群ではメスの体サイズ組成に明瞭な個体群間変異があり、実験結果から得られた推定値も異なっていたことから、これらを考慮した実験方法や解析手法を工夫する必要性が示唆された。
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