2008 Fiscal Year Annual Research Report
サメのユニークな尿素保持機構:腎臓単離ネフロンの分子解剖による新展開
Project/Area Number |
19570055
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
兵藤 晋 The University of Tokyo, 海洋研究所, 准教授 (40222244)
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Keywords | 体液調節 / 軟骨魚類 / 環境適応 / 腎臓 / 尿素 / 輸送体分子 / 分子解剖 / ゾウギンザメ |
Research Abstract |
軟骨魚類(サメ・エイ・ギンザメ)は体内に尿素をため込むことで、体内の浸透圧を海水と同じレベルに保つ。その結果、海という高浸透圧環境でも脱水から免れ適応できる。この尿素による体液調節のしくみを明らかにするため、尿素調節にもっとも重要な腎臓に注目し、1)尿素代謝に関る膜輸送体の同定、2)環境浸透圧の変化に伴う膜輸送体分子の動態、という二つの研究を進めた。昨年度の研究で、ゾウギンザメから3種類の尿素輸送体を世界で初めてクローニングすることに成功したが、今年度の研究からスプライシングバリアントを含む5種類の輸送体が腎臓で発現していること、ツメガエル卵を用.いていずれも機能的な促進型尿素輸送体であることを証明した。現在特異的な抗体を作成中であるが、予備的な染色結果からはUT-betaとUT-gammaはすでにドチザメで同定した尿素輸送体とは異なる尿細管分節に存在しており、尿素再吸収の分子機構解明のための大きな手がかりになることは間違いない。NaKCI共輸送体や水チャネルの同定も順調に進んでおり、これらの輸送分子群を今後総合的にマッピングしていくことにより、尿素再吸収の全貌を明らかにしていくことができると考えている。 尿素輸送体分子の動態に関しては、環境浸透圧を増減させる「戻し実験」を行った。昨年度の研究で、ドチザメを低浸透圧環境におくと、尿素輸送体が頂端膜から消失することを発見したが、そのような個体を通常海水に戻すことにより頂端膜への尿素輸送体蓄積が回復することを見出した。このことは、頂端膜での尿素輸送体存在量が生理学的に制御されることを示している。頂端膜の尿素輸送体量は、血液中の尿素濃度と高い相関関係を示し、尿素再吸収に直接関与することを示唆している。また、血液中のバソトシン濃度とも正の相関を示し、バソトシンが尿素輸送体の制御因子である可能性を示した。
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Research Products
(14 results)