2008 Fiscal Year Annual Research Report
アユモドキの"純淡水回遊"から魚類の回遊を普遍的に制御する環境/内分泌要因を探る
Project/Area Number |
19570057
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
坂本 竜哉 Okayama University, 大学院・自然科学研究科, 教授 (10294480)
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Keywords | 回遊 / 環境 / ホルモン / 適応 / 保全 / 行動 / 国際研究者交流 / アメリカ合衆国 |
Research Abstract |
まず、吉井川水系にて遡上から産卵期を中心にアユモドキ成魚の行動を定量的に調査した。そして、遡上は、降雨/高水位の後であることを確認した。サケ科魚類の降河を惹起すると最近報告された水温との相関はなかった。また、各種ホルモンの血中濃度も解析した。これまで、甲状腺ホルモンとテストステロンが、遡上のピークに雌雄どちらでも高まることが示唆されていたが、この再現性も2年間確認した。これらは、遡上を誘起する要因が、降雨/高水位と甲状腺ホルモン・テストステロンである可能性を示している。断片的であるが、コイやフナ類、ナマズの産卵回遊、サケ科魚類の降海といった分類群や生態の異なる魚類でも示唆されており、回遊制御の普遍的要因なのかもしれない。 次に、上記のように野外調査で重要性が示唆された環境要因について、実際にアユモドキ成魚の遡上を制御しているかを検討した。遡上用水路を再現し、かつ環境条件の設定と選択ができる行動実験水槽を作製した。この水槽において、まず水位や水温は一定で種々の水を流入させ、魚の行動を調べた。浸水前の産卵地から採取した土を浸けた水を流入させると、上流側に移動する回数が増加した。また、産卵地の土を浸けた水を流入させた水.路を、水のみの水路よりも選択した。産卵地の土を浸けた水と、河川本流の土を浸けた水では、前者を選択する傾向が見られたが有意差はなかった。全ての実験で、濁度の変化は検出できなかった。以上から、土の何らかの成分が、遡上行動を誘起していることが明らかとなった。 また、産卵地の土の成分による産卵の惹起にも成功した。土の何らかの成分は、アユモドキ成魚の遡上から産卵までの一連の行動で極めて重要な環境要因であると思われる。また、これらがフナ類やドジョウ類でも共通することも予備的に見出した。
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