2008 Fiscal Year Annual Research Report
日本列島におけるニホンジカ2系統の成立過程-多重渡来仮説の再検討
Project/Area Number |
19570081
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
玉手 英利 Yamagata University, 理学部, 教授 (90163675)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
廣田 忠雄 山形大学, 理学部, 准教授 (00431635)
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Keywords | 生物多様性 / ニホンジカ / 分子系統地理 / 遺伝的多様性 / 生物地理学 |
Research Abstract |
ニホンジカのミトコンドリアDNAのハプロタイプは、北海道から近畿地方までの北日本クレードと、それ以西から九州までの南日本クレードに分かれている。これらの2系統の起源を明らかにすることを目的とした。今年度は、南日本クレードの屋久島と宮崎県のニホンジカのミトコンドリアDNA調節領域の塩基配列を決定して、昨年度に作成した全国のニホンジカの塩基配列データセットに加えて分子系統地理解析を行った。屋久島と宮崎県のニホンジカの塩基配列は、糞からDNAを抽出してDNAを材料として決定した。調節領域の反復配列についても、統計的最節約ネットワークを作成して、生成順序を検証した。 塩基配列解析の結果、南日本クレードでは、屋久島と九州-四国の分岐が深く、両者は別々のレフユージアに退避していた可能性が示唆された。反復配列解析の結果、北日本と南日本系統とアカシカの反復モチーフがほぼ等距離となり、反復配列の分岐は、南北クレードのミトコンドリアゲノム分岐の初期に起こったことが示唆された。さらに、ツキノワグマ、ニホンザル、落葉広葉樹林と常緑広葉樹林の主要な樹種の分子系統学的研究の文献データに基づいて、ニホンジカとの分子系統地理学的類似性を調査した。その結果、ニホンジカを含む大型・中型哺乳動物と落葉広葉樹の分子系統地理は極めて類似性が高く、近畿・四国地方で2分岐するパターンを示していた。以上の結果は、ニホンジカが更新世における落葉広葉樹林帯の分布の変化とともに分布の拡大縮小をしたことを裏付けるもので、2系統はそれぞれ別のレフユージアから拡大した可能性が高いものとの結論に至った。一方、北日本クレードが更新世の終わりに北方から日本列島に侵入したとする多重渡来仮説を支持する結果は得られなかった。
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Research Products
(1 results)