2007 Fiscal Year Annual Research Report
紅藻類の無配生殖化と雑種強勢に関する進化生態学的研究
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19570092
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Research Institution | Fukui Prefectural University |
Principal Investigator |
神谷 充伸 Fukui Prefectural University, 生物資源学部, 准教授 (00281139)
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Keywords | 海藻 / 無性生殖 / 世代交代 / 交雑 / 倍数体 |
Research Abstract |
Caloglossa monostichaの2交配群間の交雑で生じた無配生殖株は、正常な胞子体と同様に2倍体であること、雄株と雌株のゲノムを有するヘテロ接合体であること、雌株を近隣から単離した別株に換えて交雑しても無配生殖化が起こることが明らかになった。 天然で単離されたCaloglossa leprieuriiの無配生殖株について、核コードのアクチン遺伝子の遺伝子型を調べたところ、ギアナ、メキシコ、インド、マレーシア、サウスカロライナ株には遺伝子型がそれぞれ1つずつしか見つからなかったのに対し、オーストラリア株とフロリダ株にはそれぞれ3つの遺伝子型が見つかった。有性生殖株の遺伝子型と比較したところ、フロリダ株の3つの遺伝子型は、それぞれフロリダ、ペルー、中米&マダガスカルの有性生殖株の遺伝子型と類似していることなどが示された。以上の結果から、本種の無配生殖化は、遺伝的に分化した集団間の交雑によって生じた可能性が強く示唆された。しかし、オーストラリア株とフロリダ株以外の無配生殖株は交雑由来である可能性は低く、他にも無配生殖化を引き起こすメカニズムが存在すると考えられる。 オーストラリアで単離されたCaloglossa vieillardiiの無配生殖株2株と有性生殖株の配偶体5株・胞子体2株を12、14、16、18、20℃で培養したところ、有性生殖株は14℃以上で成熟したのに対し、無配生殖株はすべての条件で成熟した。有性生殖集団の分布のはずれであるオーストラリア南部に無配生殖集団が生育しているのは、低温で成熟可能であるためと考えられる。 本研究によって、天然に生育する無配生殖種が交雑によって生じた可能性が示され、海藻の生殖メカニズムの一つとして認識すべきと考えられる。これは、海藻の生態や生殖戦略を考える上で非常に意義のある発見であると同時に、海藻の養殖や種苗生産への応用も期待される。
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Research Products
(6 results)