2008 Fiscal Year Annual Research Report
紅藻類の無配生殖化と雑種強勢に関する進化生態学的研究
Project/Area Number |
19570092
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Research Institution | Fukui Prefectural University |
Principal Investigator |
神谷 充伸 Fukui Prefectural University, 生物資源学部, 准教授 (00281139)
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Keywords | 海藻 / 無配生殖 / 世代交代 / 交雑 / 異数倍数体 |
Research Abstract |
アクチン遺伝子配列の解析により、天然で単離されたフロリダの無配生殖株において3つの遺伝子型があることが示された。そこで核相分析をしたところ、遺伝的に近縁なフロリダ産雌性配偶体は1Nだったのに対し、同じく遺伝的に近縁なマダガスカル産雄性配偶体は2Nであり、フロリダ産無配生殖株は3Nであることがわかった。このことより、フロリダ産無配生殖株は交雑によって異数倍数体となったために、正常な減数分裂ができず、無配生殖化した可能性が示唆された。 フロリダ産無配生殖株と遺伝的に近縁な雄性生殖株(フロリダ2株、サウスカロライナ2株、テネシー1株、ニュージャージー1株、ペルー1株、マダガスカル1株、グアテマラ1株、メキシコ1株)を用いて交雑実験を行ったところ、サウスカロライナ、テネシー、ニュージャージー株間では稔性のあるF1配偶体が形成された。一方、マダガスカル産の雄性配偶体1株とサウスカロライナ産の雌性配偶体2株間では四分胞子体が生じたが、四分胞子はほとんど発芽できず、わずかに発芽した個体はふたたび四分胞子体となった。 これらの培養株について核相分析をしたところ、サウスカロライナ株は1N、マダガスカル産雄性配偶体は2Nであり、両者の間で生じた四分胞子体は2Nであることがわかった。このことから、マダガスカル産雄性配偶体の精子形成時に減数分裂が起こっている可能性が考えられるが、紅藻では精子形成時の減数分裂は報告されておらず、今後の詳細な解析が必要である。 本研究の結果は、本藻における無配生殖化は生活史における倍数性の変化が関与していることを示唆している。この現象は陸上植物では一般的であるが、藻類で示された例はほとんどなく、藻類生活史の多様性メカニズムを解明するカギとなるものと期待される。
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Research Products
(2 results)