2009 Fiscal Year Annual Research Report
紅藻類の無配生殖化と雑種強勢に関する進化生態学的研究
Project/Area Number |
19570092
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Research Institution | Fukui Prefectural University |
Principal Investigator |
神谷 充伸 Fukui Prefectural University, 海洋生物資源学部, 准教授 (00281139)
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Keywords | 海藻 / 無配生殖 / 世代交代 / 交雑 / 異数倍数体 |
Research Abstract |
セイヨウアヤギヌの無配生殖株は、フロリダ(3株)、サウスカロライナ、メキシコ(7株)、エルサルバドル、ギアナ、ブラジル、インド、オーストラリア、マレーシア(2株)から単離されている。これらのアクチン遺伝子配列を解析したところ、サウスカロライナ、メキシコ(1株)、マレーシア(2株)、インドの無配生殖株は遺伝子型がホモであり、それ以外の無配生殖株はヘテロだった。無配生殖株の繁殖様式を観察したところ、ヘテロの無配生殖株は常に胞子体だけで繁殖を繰り返すのに対し、ホモの無配生殖株からはしばしば配偶体も生じることが分かった(ただし、ホモのメキシコ株はごく最近単離されたため配偶体形成は未確認。サウスカロライナ株は長期にわたって生殖器官を形成していない)。昨年度実施した交雑実験において、遺伝的に異なる有性生殖株間の交雑により無配生殖化が誘導され、生じたヘテロ無配生殖個体から配偶体の形成は確認されていないことから、遺伝子型(ホモorヘテロ)と無配生殖株の繁殖様式には何らかの相関があると考えられる。また、ヘテロ無配生殖株が単離された集団からは、同じハプロタイプの配偶体は見つかっていないのに対して、ホモ無配生殖株は同じハプロタイプの配偶体と同所的に生育している。これらの結果から、本藻には少なくとも、遺伝的に異なる個体間交雑による無配生殖化と、有性生殖株からの突発的な無配生殖化の2通りのメカニズムが存在することが示唆された。 本研究により、陸上植物で報告されている異種間交雑による無配生殖化現象が、紅藻類でも起きていることが明らかになった。この現象が藻類で示された例はほとんどなく、藻類生活史の多様性メカニズムを解明するカギになるものと期待される。
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Research Products
(4 results)