Research Abstract |
熱ショック応答を担う熱ショックタンパク質(HSP)遺伝子の転写は,プロモーター領域のHSE(Heat Shock Element)に結合する熱ショック転写因子HSF(Heat Shock Factor)により制御されている。これまでのゲノム解析より,出芽酵母のHSFは,典型的なHSE塩基配列(perfect型)とは多少異なる配列(gap型やstep型)にも結合し転写を制御することを明らかにした。本年度は,さまざまなHSE配列とストレス特異的な転写応答には関連があるか,他の生物のHSFもさまざまなHSE配列を認識できるか,について検討した。 さまざまなHSE(perfect型,gap型,step型)を挿入したレポーター遺伝子を出芽酵母に導入し,種々のストレス条件下(熱ショック,酸化剤メナジオン,酸化剤ジアミド)で培養し転写活性の変動を調べた。予想に反し,ストレスの種類に応じたHSEタイプ特異的な転写は生じなかった。しかしながら,この解析過程において,スーパーオキシドによるHSFの転写活性化にはcAMP依存的プロイテインキナーゼが負に作用することを明らかにした。一方,HSF遺伝子を欠失した出芽酵母株に,分裂酵母HSFやヒトHSFのサブタイプ(HSF1,HSF2,HSF4)を導入・発現させた。その結果,分裂酵母HSFは種々のHSEを認識できるのに対し,ヒトHSFはサブタイプにより認識できるHSEが異なっていた。同様のHSE特異性は,HeLa細胞に導入した場合にも認められた。 今後は,ヒトHSFサブタイプとHSEおよびストレス間の特異的な転写調節について検討する。
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