2007 Fiscal Year Annual Research Report
コナガの抵抗性遺伝子の機能解析と防除への応用に関する基礎的研究
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19580055
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
園田 昌司 Okayama University, 資源生物科学研究所, 准教授 (00325127)
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Keywords | コナガ / 殺虫剤抵抗性 / 合成ピレスロイド / ナトリウムチャネル / 選択的スプライシング |
Research Abstract |
本年度は、1)コナガの合成ピレスロイド剤抵抗性に関わるナトリウムチャネル遺伝子の新たなアミノ酸置換、2)ナトリウムチャネル遺伝子において選択的スプライシングの生じている箇所を特定することを目的とした。コナガの合成ピレスロイド剤抵抗性系統と感受性系統を用いてナトリウムチャネル遺伝子のcDNAおよびゲノムDNAのクローニングを行い、塩基配列決定を行った。cDNA、ゲノムDNAともにほぼ全長に相当する領域の塩基配列を決定することができた。決定した塩基配列の鎖長は、cDNAが約5.6kb、ゲノムDNAが約22kbである。決定した領域には34のエキソンがコードされていた。ほぼ完全長のナトリウムチャネル遺伝子の塩基配列が決定されたのは鱗翅目昆虫ではHeliothis virescensに次いで2例目である。コードされるアミノ酸配列はH. virescensのナトリウムチャネルの配列と84%の相同性を示した。合成ピレスロイド剤抵抗性系統と感受性系統間でアミノ酸配列の比較を行ったところ、既知のアミノ酸置換に加え、新たなアミノ酸置換をドメインII-IIIのリンカー領城とC末端領域の2カ所において発見した。これらのアミノ酸置換の合成ピレスロイド剤抵抗性における重要度を解析することが今後の課題として残った。また、cDNA配列とゲノム配列を詳細に比較した結果、コナガのナトリウムチャネルには選択的スプライシングをうける領域が8カ所存在することが明らかとなった。これらの選択的スプライシングの内訳はoptional splicingが6カ所、mutually exclusive splicingが2カ所であった。昆虫には1コピーのナトリウムチャネル遺伝子しか存在しないが、選択的スプライシングによって多様な機能を獲得してきたと考えられている。これまで選択的スプライシングの殺虫剤抵抗性への関与が解析された例はない。今後は選択的スプライシングの様式を合成ピレスロイド剤抵抗性と感受性系統間で発育段階毎に比較し、抵抗性への関与あるいは無関与を明らかにしていきたいと考えている。
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