2010 Fiscal Year Annual Research Report
渦鞭毛虫ヤコウチュウの核及びミトコンドリアの先行的小規模ゲノム解析
Project/Area Number |
19580203
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
遠藤 浩 金沢大学, 自然システム学系, 准教授 (20272932)
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Keywords | ゲノム / 核 / ミトコンドリア / 渦鞭毛虫 / 赤潮 / 原生生物 / 進化 / アルベオラータ |
Research Abstract |
近年、繊毛虫テトラヒメナとヒメゾウリムシのゲノムプロジェクトが終了した。それらの解析によれば、テトラヒメナ全28,000遺伝子のうち他の生物の遺伝子との相同性が確認されたのはおよそ12,000遺伝子だけで、残りの16,000遺伝子は繊毛虫特異的な遺伝子であることが判明した。これらのことから、繊毛虫類に比較的近縁な原生動物である渦鞭毛虫類は、分類群特異的な遺伝子を多数持つことが予想される。渦鞭毛虫類のゲノム解析は葉緑体をもつ藻類に集中している。葉緑体をもたない渦鞭毛虫類の基礎研究が不足しており、最も祖先的な渦鞭毛虫であるオキシリス(Oxyrrhis marina)や次に祖先的なヤコウチュウ(Noctiluca scintillans)のゲノム研究は、赤潮対策などを含めてさまざまな分野に予想もできない重要な貢献をする可能性がある。 大量培養したヤコウチュウからRNAを抽出して、cDNAライブラリーを作成し、ランダムに約150のクローンを解析した。残念ながら多くのクローンは3'末端Poly-A tailからの伸長反応が阻害され、長い、あるいは完全長のcDNAは多くは得られず、3'-UTR領域付近の配列のみが多く得られたため、現時点ではどのような遺伝子なのか同定されていない。しかしこれらの情報をもとに、ゲノムDNAからコーディング部位をPCRにより個別に増幅して同定を進めており、解析の終了したものから随時公開して行く予定である。 一方、もっとも祖先的な渦鞭毛虫であるオキシリスのmtDNAの単離に成功し、ほぼゲノムの全貌が明らかになった。わずか4種類の遺伝子のみをもち、それらの遺伝子は数kbのミニサークルDNA上にコードされている。このことは、渦鞭毛虫類とアピコンプレクサ類の共通祖先の段階で遺伝子数の著しい減少、ゲノムの特殊化が起きたことを示しており、渦鞭毛虫類とアピコンプレクサ類の祖先がかって寄生生活をしていた可能性が示唆された。 現存、約50の配列データをDDBJに登録済みである。
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Research Products
(8 results)