2009 Fiscal Year Annual Research Report
増えすぎた栽培漁業種クロダイの広島湾における初期生残戦略の解明
Project/Area Number |
19580205
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
海野 徹也 Hiroshima University, 大学院・生物圈科学研究科, 准教授 (70232890)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長澤 和也 広島大学, 大学院・生物圈科学研究科, 教授 (40416029)
小路 淳 広島大学, 大学院・生物圈科学研究科, 准教授 (10397565)
斉藤 英俊 広島大学, 大学院・生物圈科学研究科, 助教 (00294546)
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Keywords | クロダイ / 広島湾 / 卵密度 / 初期生態 / 仔稚魚 / サーフゾーン / 摂餌生態 |
Research Abstract |
広島湾表層におけるクロダイの平均卵密度は、2007年が8.46個/m^3、2008年が9.97個/m^3であった。2009年の調査では21.18個/m^3となり、各年とも5月中旬~6月上旬に卵密度が最大なった。 また、卵分布の傾向としては、湾奥部で低く、湾口部で高くなった。ただし、クロダイ卵の比重(σ_<15>=1.021)を考慮すれば、湾奥部では卵が沈下している可能性がある。そこで、2009年に層別採集を行ったところ、卵はいずれの調査定点においても水深1~15m層に概ね一様に分布し、垂直分布と水平分布密度の高低は調査定点で一致した。広島湾におけるクロダイの産卵盛期は5月中旬~6月上旬主であり、受精卵は産卵水深、塩分躍層、密度躍層など様々な要因によって幅広い層に拡散していると考えられた。特に、卵密度が高かったのは大黒神島北岸沖、西能美島鹿田漁港沖、大須瀬戸で、これらの海域に共通することは、比較的塩分が高く、かつ、海岸から急深である海域で、これらが広島湾のクロダイの主産卵場と考えられた。一方、稚魚の食性を調査したところ、稚魚が豊富な宮島網の浦(Stn.1)ではヨコエビ類が、西能美島鹿田漁港(Stn.4)と似島大黄湾(Stn.5)ではカイアシ類(ハルパクチクス目の複数種)とカイアシ類(Paracalanus属の1種)への依存度が高かった。このことから、広島湾のクロダイ稚魚は特定の餌生物に依存せず、育成場の餌料環境に応じた柔軟性を有していると考えられた。2009年度における、宮島網の浦の稚魚の成長速度は0.49mm/dayとなった。この結果は2007年(0.50mm/day)や2008年(0.66mm/day)の結果と比較すると最小となった。2009年の宮島網の浦では稚魚の採集量も少なく、胃内容物の餌生物の種類、量も低かった。よって、育成場の稚魚の成長には稚魚の加入量のほか、餌料環境が影響している可能性が高い。
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Research Products
(3 results)