Research Abstract |
研究成果の第一は,水田農業政策,米の消費・流通の変化の下での,系統農協米穀事業が直面する課題と改革の方向を実証的に明らかにした。系統農協米穀事業は,あらゆる分野で後退しているが,その最大の要因は,消費・流通の変化のなかで,硬直的な共販を維持している点にあることを実証した。その上で,単協,ホクレンでの新たな動きを実証し,その意義を明らかにした。 第二は,大規模水田農業経営の動向についての統計分析である。農林業センサス分析によると,着実に増加しているが,後継者問題が深刻化していることを明らかにした。また,経営面では,経営の多角化と複合化の動きを統計と各種アンケート調査により明らかにした。さらに,稲作コストの面では10〜15ha以上になると低下しないし,法人経営がコスト高であることを文献研究と経営統計から改めて実証した。さらに,法人経営は,生産調整助成金と各種補助金に依存していることも文献解題と統計分析によりかくにんした。 第三は,大規模水田経営と水田構造についての実態分析である。本年は,山形県米沢,福島県喜多方市,新潟県稲作経営者会議,滋賀県環境こだわり農業,鹿児島県南さつま市を調査対象とした。実態調査により,統計分析で析出した経営問題が改めて裏打ちされた。同時に,大規模水田経営は,新たな経営転換の模索を試みていることに共通している。さらに,環境保全型農業,農地・水・環境保全向上対策に積極的に取組,経営内部に組み込んでいる。同時に,大規模水田経営のみでは,地域内部の農地を管理することが困難であり,集落,地域内での新たな連携の取組が進展していることを明らかにした。その連携は,農地調整だけではなく環境,米,農産物販売等を含めた総合的な地域連携にある。この点が新たな特徴であり,20年度の課題である。
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