Research Abstract |
(1)市町村データベースの開発 既存の統計資料を基に,社会経済データ(産業別生産額,所得額,労働,民間資本ストック額等)をGIS手法等を活用して市町村別あるいは旧市町村別のパネル・データ・ベースとして構築するとともに,社会心理データ(住民満足度,信頼・互酬性・住民ネットワークに関する住民評価から求めたソーシャルキャピタル水準)を,既存の調査データ(農村開発企画委員会、2005〜2006年度調査)をもとに、山口県及び山形県内の各市町村の指標値としてデータベース化した。 このアータベースは,本年度に実施した分析及び次年度以降に実施する分析において活用し,実証研究を目的とする本研究の基礎となるものとして重要である。 (2)農村社会資本ストックの推定 地域格差に影響する要因を定量化するため,内閣府から公表されている都道府県別社会資本ストック額をもとに,総務省の「公共施設状況調」等の調査データから,市町村別・工種別の社会資本ストック額に案分して推計し,上記の社会経済データと整合させてデータベース化した。 このデータベースも,市町村データベースと同様に,本年度に実施した分析及び次年度以降に実施する分析において活用し,実証研究を目的とする本研究の基礎となるものとして重要である。 (3)県内の地域格差(市町村間)の動向と影響要因の解明 市町村データ・ベースをもとに,山形県及び山口県について,1人当たりの市町村民所得額及び産業別生産額について,ジニ係数,変動係数等の格差指標を算出し,その時系列的な動向について定量的に分析した。その結果,地域格差が2000年度から2005年度にかけて拡大していることが市町村ベースのデータでも確認できた。 また,山形県及び山口県における住民満足度の地域格差の影響要因について,重回帰分析及び共分散構造分析の手法を用いてモデル化を試みた。その結果,経済指標とソーシャルキャピタルがともに,地域の満足度を高める要因として寄与しているものの,両者の間には,相互にマイナスの相関関係がみられることを明らかにした。この関係を視覚的にモデル化した結果,都市と農村の間に存在する経済格差に起因して拡大する満足度格差が,都市部より農村部で比較的高い水準で維持されているソーシャルキャピタルによって緩和されていることが,実証的に解明できた。 この実証研究の成果は,これまであまり分析されてこなかった住民満足度ベースの地域格差に関する重要なファクトファインディングスであり,今後の地域格差緩和政策を立案する上で鍵となる要因であると考えられる。
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