2008 Fiscal Year Annual Research Report
個体群存続可能性分析を用いた溜め池に生育する水生植物の農業依存性の定量化
Project/Area Number |
19580290
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Research Institution | National Agricultural Research Organization |
Principal Investigator |
嶺田 拓也 National Agricultural Research Organization, 農村工学研究所・農村環境部・環境評価研究室, 主任研究員 (70360386)
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Keywords | 水生植物 / 生態学 / シミュレーション工学 / ため池 / 環境変動 / 解析・評価 |
Research Abstract |
かんがい用の溜め池環境に生活史をおく水生植物の多くは農業に伴う管理に生活史を合わせている農業依存種と考えられ,溜め池を維持管理する行為の維持・消失に大きく影響を受けることが予想される。香川県仲多度地域および石川県奥能登地域のため池群を対象として水生植物の農業依存性の定量化を試みた。 1)溜め池に関わる管理種別のデータベース作成 香川県仲多度地域の溜め池155ヵ所および石川県奥能登地域の溜め池16ヵ所の管理履歴について,水生植物の発芽・生育・再生産に関わる要因として刈り取り密度,水位変動,土砂流入頻度に定量的に変換した管理種別のデータベースを作成した。 2)管理種別のパラメータ化 アンケート調査等より得られた溜め池の管理履歴について,各溜め池の水生植物群落の動態データをもとに管理種別ごとに-1(負の影響大)〜0(影響なし)〜1(正の影響大)とパラメータ化した。 3)個体群存続可能性分析による農業依存性の定量化 昨年度に実施した水生植物の変化量を目的変数として,パラメータ化した管理種別ごとの環境変動から絶滅確率を推定したところ,浮葉植物群落および沈水植物群落の発生量は8月〜3月までの水位変動が全くない場合や5m以上と激しい場合には絶滅確率が高まることが推定された。一方,水位変動が1〜3mの場合には絶滅確率が減少した。また,刈り取り密度や土砂流入頻度に関しては,パラメータを変えても抽水植物,浮葉植物,沈水植物のいずれの群落においても絶滅確率に差は認められなかった。従って,特に沈水植物群落の存続にとっては冬期の適度な水位変動をもたらす溜め池管理が重要であることが示唆された。
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