Research Abstract |
本研究は,農産物や食品に付着する微生物の成長死滅を動的に予測するシミュレーション技術の開発を基礎とし,安全な食生産システムの高度化を図るものである.本年度は,以下の3課題について研究を遂行した.すなわち,1)貯蔵施設内の空調計画,2)環境パラメータの微生物成長死滅に及ぼす影響,および,3)微生物の付着・成長パターンの解明,研究である. まず,貯蔵施設内の空調計画については,低温高湿貯蔵庫内における気流について解析し,温湿度分布の均一化と気流の乱れ抑制について検討した.温湿度むらや気流の乱れは結露の発生を促進し,微生物繁殖の原因となる.この防止に必要な空調計画について指針を示した.つぎに,微生物の電磁波殺菌では,マイクロ波加熱によるサルモネラ菌およびリステリア菌のリスク評価ソフトを開発しマイクロ波出力や材料寸法等の違いによる殺菌時間の予測を可能にした.赤外線加熱による殺菌では,数値流体力学モデルと死滅モデルの組み合わせにより,農産物表在菌の動的殺菌予測について考究し,加熱・殺菌むらの発生や品質への影響等について検討した.その結果温度では,1.9Kの精度で予測が可能となり,加熱パターンの再現も可能となった.さらに紫外線照射を加えることで相乗効果が得られることを明らかとした.ただし,品目によっては黒変ヤケ等の品質劣化が確認されたため,品質劣化限界点について検討する必要があると考える.微生物の付着・成長パターンの解明では,温度変動がサルモネラおよび黄色ブドウ球菌の食品容器表面付着に及ぼす影響について検討し,バイオフィルム形成初期において高温が付着を促進すること,その後,高温は離脱を促進すること,一旦付着した菌は低温におかれることによって保持されることなど,バイオフィルムの成長パターンを明らかにした. 以上,本年度は食の安全を支える個別的要素について多面的アプローチを行ったものである.
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