2008 Fiscal Year Annual Research Report
胃から産生される新しいペプチドによる消化管運動の調節機序
Project/Area Number |
19580337
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
志水 泰武 Gifu University, 応用生物科学部, 教授 (40243802)
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Keywords | グレリン / デスアシルグレリン / 消化管運動 / 排便中枢 / 骨盤神経 / 過敏性腸症候群 / 脊髄 / オベスタチン |
Research Abstract |
本研究は、新しいペプチドホルモンであるグレリンの消化管運動に対する作用を明確にすることを目的とする。実験にはラットを用い、麻酔下で消化管にカニューレを挿入し、腸管内腔の圧変化、および単位時間あたりの内腔液の推送量を指標とし、消化管運動を評価した。前年度の結果より、脊髄内で産生されるグレリンが排便を促進することが予想された。今年度は、グレリンの脂肪酸による修飾を欠落させたデスアシルグレリン、およびグレリンの前駆ペプチドから切り出されるもう一つの活性ペプチドであるオベスタチンの作用を精査した。デスアシルグレリン、あるいはオベスタチンを静脈内に投与したが、消化管運動に変化は認められなかった。また、両ペプチドは脊髄内に投与した場合にも、大腸運動には影響を与えなかった。一方、グレリンを脊髄内に投与する前に、デスアシルグレリンを予め同じ部位に投与しておくと、グレリンによる結直腸の推送運動亢進作用は減弱した。オベスタチンにおいても、デスアシルグレリンと同様に、グレリンの結直腸運動亢進作用に拮抗する作用が確認された。今後、グレリンに応答する神経が脊髄内に存在することを証明するために、グレリン受容体に対する特異抗体や蛍光標識したグレリンを用いた免疫組織化学的検討、グレリン投与後のc-Fos発現解析等が必要であると考えられる。 今回の成果より、脊髄におけるグレリンの脂肪酸修飾の度合い、および同じ前駆ペプチドから切り出されるオベスタチンの存在により、大腸運動を促進する作用が微調整されている可能性が示唆された。この制御系のアンバランスが、過敏性腸症候群(ストレス時に下痢をしたり、便秘をしたりする病態)の原因のひとつになりうるので、本研究の成果はこの病態の解明に寄与し、有効な治療法の開発につながることが期待される。
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Research Products
(19 results)