2009 Fiscal Year Annual Research Report
胃から産生される新しいペプチドによる消化管運動の調節機序
Project/Area Number |
19580337
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
志水 泰武 Gifu University, 応用生物科学部, 教授 (40243802)
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Keywords | グレリン / デスアシルグレリン / 消化管運動 / 排便中枢 / 骨盤神経 / 過敏性腸症候群 / 脊髄 / オベスタチン |
Research Abstract |
本研究の目的は、グレリンの消化管運動に対する作用を明確にすることである。消化管運動を評価する実験では、麻酔下のラットの消化管にカニューレを挿入し、腸管内腔の圧変化、および単位時間あたりの内腔液の推送量を測定した。前年度までの結果より、脊髄内で産生されるグレリンが大腸運動を促進すること、脂肪酸修飾がないデスアシルグレリン、およびグレリンの前駆ペプチドから切り出されるもう一つの活性ペプチドであるオベスタチンには、大腸運動を促進する作用がないことがわかった。今年度は、これらのペプチドの相互作用、脊髄排便中枢と大腸の連絡路を精査した。デスアシルグレリンは単独では作用がないものの、グレリンと同時に脊髄内に投与した場合には、グレリンの大腸運動促進作用を減弱させることが判明した。グレリンで予め大腸運動を活性化させておいた状態で、デスアシルグレリンを投与しても抑制作用は発揮された。一方、グレリンの脊髄内投与は血圧を上昇させるが、この作用に対してはデスアシルグレリンの影響はなかった。オベスタチンには作用が認められなかった。骨盤神経を外科的に切除しておくと、グレリンの作用は発現しなかった。RT-PCR法、およびin situハイブリダイゼーション法によって、脊髄内にグレリン受容体が存在することが明らかになった。今回の成果より、脊髄におけるグレリンの脂肪酸修飾の度合いにより、大腸運動を促進する作用が微調整されている可能性が示唆された。この制御系のアンバランスが、ストレスに伴う下痢や便秘の原因になりうるので、本研究の成果はこの病態の解明に寄与し、有効な治療法の開発につながることが期待される。
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Research Products
(34 results)