2009 Fiscal Year Annual Research Report
土壌中におけるコロイド粒子の輸送時間及び起源推定手法の開発
Project/Area Number |
19580389
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Research Institution | National Institute for Agro-Environmental Sciences |
Principal Investigator |
江口 定夫 National Institute for Agro-Environmental Sciences, 物質循環研究領域, 主任研究員 (30354020)
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Keywords | コロイド粒子 / 放射性元素 / 難溶性環境負荷物質 / 半減期 / ベリリウム7 / 鉛210 / セシウム137 / 大気降下物 |
Research Abstract |
重粘土質の転換畑を対象に,ある降雨イベント(11時間で計45mm)における暗渠及び表面排水を経時的に採取し,ろ過(孔径0.025μm)によって易動性の土壌コロイド粒子(MSC)を分離すると共に,それに強く吸着する性質を持つ7Be(半減期53.1d),137Cs(同30.1yr)及び210Pb濃度(同22.3yr;大気由来210Pbと土壌由来210Pb濃度を区別)を測定した。暗渠排水中MSC(99~244mg/L)の7Be濃度の大気由来210Pb濃度に対する比(1.4~1.8)は,理論的に,輸送時間が長いほど表面排水中MSC(157~257mg/L)のそれ(1.9~2.6)よりも小さくなるはずである。これを利用して,地表面のMSCが暗渠(深さ60cm)から排出されるまでの輸送時間を求めたところ,約35dと比較的短いことが明らかとなった。これは,MSCが,重粘土質の土壌で良く見られる亀裂等の粗孔隙を通じた選択的な水移動により,急速に輸送されたことを示唆する。また,暗渠及び表面排水中MSCの大気由来210Pb濃度の全210Pb濃度に対する比は,共にほぼ同じ(0.96)だったことから,下層土からの土壌由来210Pbを含むMSC付加はほとんど生じていないと考えられる。一方,暗渠排水中MSCの全210Pb濃度は,表面排水中のそれの77%に過ぎなかったことから,残りの23%は210Pbをほとんど含まないMSC(暗渠排水管中で沈殿生成した鉄酸化物など)と考えられる。なお,暗渠排水中MSCの137Cs濃度は表面排水の約1.2倍と,予想に反して増加し,その原因の詳細は今後の課題として残された。以上のように,圃場条件下の土壌中におけるコロイド粒子の輸送時間及び起源を推定する手法を開発した。より詳細なMSC輸送メカニズムの解明および手法の適用限界・信頼性の幅等については,更なる研究が必要である。
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Research Products
(1 results)