Research Abstract |
本年度は,細胞分裂期におけるSrc型チロシンキナーゼの機能解明を目指し,1.Src型チロシンキナーゼの局在解析,2.阻害剤による分裂期への影響の解析,3.リン酸化プロテオミクスを行うための抗体の大量精製をおこなった。 1.c-Src,Fyn,c-Yes,Lynについて細胞分裂期の局在を調べた結果,c-Src,c-Yes,Fynは収縮環,LynおよびFynは細胞質膜の収縮環形成部位に局在する傾向が観察された。また,Fynは中心体にも観察された。また,Lynがcentral spindleに局在すること,および,この局在はN末端の脂質修飾により減少することを見出した。 2.CDK1阻害剤であるRO-3306により細胞周期をG2/M基に同調し,リリースして細胞分裂期を観察した。Src型チロシンキナーゼ特異的阻害剤SU6656で処理することにより,分裂時間の延長および染色体の分配異常が観察された。分裂時間の延長は,分裂前中期から中期への進行の遅延が顕著であった。また,チロシンキナーゼの阻害剤であるgenisteinによっても同様な結果が観察された。さらに,染色体の分配異常である,chromosome bridgeが観察された。このような分裂異常の原因としてスピンドルへの影響を解析した結果,阻害剤処理により,スピンドル形態の変化が観察された。 3.抗リン酸化チロシン抗体を産生するハイブリドーマをマウス腹腔に移植し,約2週間後に腹水を採取した。硫安沈澱により組精製した後プロテインGアガロースにより精製し,精製抗体として約6mgを得た。この抗体を用いた免疫沈降によりチロシンリン酸化されたタンパク質の取得を目指して条件検討中である。
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