Research Abstract |
二本鎖RNA依存プロテインキナーゼ(protein kinase,RNA regulated;PKR)はウイルス感染やインターフェロン等に応答し,自己リン酸化により活性化した後,自身が持つキナーゼ活性により下流転写調節因子eIF-2α等をリン酸化し,シグナルを伝達する酵素であり,細胞の防御機構やアポトーシスに関与する。今回,我々はラット小腸上皮細胞におけるPKRの局在性と分化との関連についてin vivoとin vitroの両系で検討した。1(in vivo):深麻酔下の胎生16日齢〜生後23日齢(胎生後期,新生児期,乳飲期,離乳期)のWistar系ラットからは十二指腸領域の小腸を,8週齢の同系ラットからは十二指腸をそれぞれ採取し,0.1Mリン酸緩衝4%parafomaldehyde(PFA)で固定し,パラフィン包埋,薄切後,抗PKR抗体を用いた免疫組織化学を行った。2(in vitro):ラット小腸上皮細胞株(IEC6)を通法に従い培養し,ヒドロコルチゾン添加による分化誘導を加え,経日的(0,1,3,5,7,10日)に抗PKR抗体を用いたウエスタンブロッティング解析と走査電顕観察を行った。その結果,1(in vivo):成熟期(8週齢)ラットでは,小腸絨毛部の上皮の頂部と基底部にPKRの免疫陽性反応が確認されたが,陰窩部の上皮には発現を認めなかった。小腸上皮における同反応は生後早期(新生児期から乳飲期)に一過性に増強し,以降減弱するも離乳期である生後21日齢頃から再び増強していた。2(in vitro):培養細胞では,培養日数および微絨毛形成により示される分化誘導の進行に応じてPKRの発現量が増加した。以上より,小腸上皮細胞におけるPKRの発現が確認され,その発現性は同細胞の形態的および機能的分化と関連していることが示唆された。
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