2008 Fiscal Year Annual Research Report
生体フロントラインの防御機構:異物排出機能の破綻と疾病
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19590293
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Research Institution | Nagasaki International University |
Principal Investigator |
和田 守正 Nagasaki International University, 薬学部, 教授 (20220965)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤田 京子 長崎国際大学, 薬学部, 助手 (50435137)
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Keywords | 生体分子 / 蛋白質 / 膜輸送 / 生体防御 / 分子医薬学 |
Research Abstract |
1.異物排出機能欠損マウスの分子病態解析による疾患発症メカニズムの解明:ABCB1欠損マウスを用いた解析から、ABCB1が腫瘍の出来やすさに関与するという結果をすでに得ていたが、本年度はさらに、発生腫瘍のサイズは不連続な3段階に分類されることを明らかにした。そのメカニズムを探るために、マイクロアレイ解析により3グループ間での遺伝子群発現パターンを調べ、パスウェイ解析を行なった結果、ミトコンドリアにおける酸化還元関連酵素遺伝子群や増殖関連遺伝子群の発現の有無がグループ間で異なることが分かり、がんの増殖過程では関連遺伝子群が恒常的に発現しているのではないし、また連続的に活性化の程度が強まっていくのでもなく、各ステージで特有の遺伝子群の活性化・不活性化が起こって、不連続に発現パターンが変化していることが明らかになった。このことは、各段階を制御している因子が存在することを示唆しているので、この因子を分子標的とした有効な腫瘍増殖の阻害につながる可能性があり、臨床的にも意義がある結果と評価できる。 2.相互作用タンパク質の同定と機能修飾の解明:細胞膜上での相互作用を検出できるスプリット・ユビキチン法の導入を計画し、ABCB1およびABCC2cDNAにユビキチンC端cDNAを結合してbait構築体を完成させた。一方、ABC膜輸送体を酵母菌内で強制発現させることはきわめて難しいことが分かったので、まずbait構築体の安定発現株を樹立したのちpreyライブラリーを導入する戦略に切り替えた。 3.マウスモデルを用いた化学予防、治療研究:ABCB1阻害薬ベラパミルの投与プロトコルを検討した結果、強制的に経口投与する方法ではストレスにより死亡する例が避けられないのに対し、餌に練りこみ、経口により一年間継続投与する方法が良いと結論付けられた。腸内に形成された腫瘍数を計測した結果、1)予想に反して、ベラパミルには腸管腫瘍形成を促進する効果があること、2)この促進効果はABCB1に依存しないこと、3)促進効果分を補正してベラパミルのABCB1阻害を介する効果のみを抽出すると、顕著な腸管腫瘍形成阻害が認められること、が明らかになり、ABCB1阻害薬による化学予防の現実性が示された。
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Research Products
(4 results)