2008 Fiscal Year Annual Research Report
ヌクリングの関与する癌及び神経変性疾患発症機構の解明
Project/Area Number |
19590310
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
坂井 隆志 The University of Tokushima, 疾患酵素学研究センター, 准教授 (80284321)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福井 清 徳島大学, 疾患酵素学研究センター, 教授 (00175564)
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Keywords | 癌 / シグナル伝達 / 発現制御 / 脳神経疾患 / 遺伝子 |
Research Abstract |
ヌクリングノックアウト(KO)マウスに頻発する肝炎併発肝ガンの発症機構の解明を目指し、研究実施計画に則り以下の実験を行った。 1.発ガン初期のステップと予想されるNF-κB活性化にヌクリングがどのように関わっているかを検討した。我々はヌクリングKOマウス由来の細胞や組織においてNF-κBが恒常的に活性化していることを確認し、更にヌクリング自体にこのNF-kB活性化を制御する働きがあるかどうかを検討した。その結果、ヌクリングがNF-κBと相互作用し、その細胞内分布を制御していることを見いだした。特に、NF-κBの活性化に伴う核内移行にヌクリングは重要であることを明らかにした。以上の結果を論文にまとめ、ヨーロッパ生化学連合雑誌に掲載された(Liuet al.FEBS J 2009)。 2.ヌクリングKOマウスの肝癌発症機構として、NF-κB活性化に伴うガレクチン3の発現誘導を検討した。ガレクチン3は肝癌発症時に肝臓において発現誘導されることが報告されており、実際ヌクリングノックアウトマウスでは肝における発現が野生型に比べて高いことを確認した。 3.また、肝癌発症の新たな要因として肝在住マクロファージ(クッパー細胞、以下KCと表記)からの種々のサイトカインの放出が報告されている。ヌクリングノックアウトマウスにおいてはこのKCが著減しており、その原因としてTNFαによるアポトーシス誘導が考えられた。TNFα刺激はKCのアポトーシス誘導と共にKCからのサイトカイン放出も誘導するという仮説を立て、これを検証した。 以上の結果はヌクリングがNF-κBの活性化を制御する重要な分子であることを示唆しており、またこの制御機構の破綻が肝炎併発肝ガン発症機序の一因となりうることを明らかにした初めての研究成果と考えられる。
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Research Products
(3 results)