Research Abstract |
本年度の研究計画書に従いLTA,LGALS2,PSMA6,LPAなどの遺伝子多型解析を進めるとともに,CELSR1,CYP2B6,mtDNAなどについても遺伝子多型関連解析を行い論文報告した。昨年度の実績報告書で報告したMTHFR多型についてはJ Atheroscl Thromb(2009)に原著論文として報告した。 1.LTA,LGALS2,PSMA6多型と心筋梗塞,悪性腫瘍との関連 [目的]最近の大規模関連解析により日本人における心筋梗塞の遺伝的リスクとしてLTA,LGALS2,PSMA6多型が同定された。しかし心筋梗塞の中間形質である冠動脈硬化症に対する効果は不明である。[対象・方法]JG-SNPに登録されている1,503連続剖検例を対象として冠動脈を含む全身の動脈硬化度と遺伝子多型の関連を検討した。[結果]LTA804C>AとLGALS2 3279C>Tと冠動脈硬化度はそれぞれオッズ比で1.54(95%Cl,1.17-2.01,AA+CA over CC)と1.62(95%Cl,1.11-2.37,TT over CC+CT)であり有意な関連を示した。両SNPは心筋梗塞とは有意な関連を示さなかった。一方,PSMA6-8C>Gは冠動脈硬化,心筋梗塞と有意な関連を示さなかった。[結論]LTA804C>AとLGALS2 3279C>Tは心筋梗塞の中間形質である冠動脈硬化症と有意な関連を示した。[付記]本研究結果の一部はJ Hum Gen (2009)に原著論文として報告した。またLTA多型は804Aアレルを一つでも持っていると全癌リスクが低下しておりBMC Cancer (2009)に原著論文として報告した。 2.LPA多型と粥状硬化性疾患の関連 [目的]高リポプロテイン(a)[Lp(a)]血症は心血管イベントの遺伝的リスクである。最近LPA I4339M多型が血清Lp(a)値と心筋梗塞に関連すると報告されたので,我々の剖検例を対象として再現性研究を行った。[対象・方法]1,850連続剖検例(平均年齢80歳,男女比,1.2:1)を対象にLPA;I4399M(rs3798220)と血清Lp(a)値,心血管疾患,全身10動脈の粥状硬化度・狭窄度の関連について検討した。[結果]LPA I4399Mの遺伝子型頻度はHardy-Weinberg平衡から有意に逸脱していた。LPA I4399Mと血清Lp(a)値、心血管疾患,全身10動脈の粥状硬化度・狭窄度の間に有意な関連を認めなかった。[結論]日本人ではLPA I4399M多型と血清Lp(a)値、粥状動脈硬化症とその合併症に有意な関連は認められなかった。
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