2007 Fiscal Year Annual Research Report
癌細胞発言内因性レトロウイルスの生物学的意義解明と有効な癌免疫制御法開発への応用
Project/Area Number |
19590405
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
工藤 千恵 Keio University, 医学部, 助教 (90424126)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河上 裕 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (50161287)
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Keywords | 癌 / 内因性レトロウイルス / 腫瘍特異的抗原 / CTLエピトープ / ペプチド |
Research Abstract |
まず、種々のヒト腫瘍細胞株におけるヒト内因性レトロウイルス遺伝子の発現をRT-PCR法で解析した。その結果、正常組織では精巣でのみわずかに発現するが、膵癌、大腸癌、胃癌、膀胱癌、乳癌、白血病、食道癌では100%、肺癌では90%、前立腺癌では80%、悪性黒色腫では70%、腎癌株では40%と、広範な癌腫に高率に発現していることが分かり、腫瘍特異的分子として治療の標的となり得る可能性が示された。そこで、HLA結合予測アルゴリズムを活用してHLA-A24拘束性のCTLエピトープを数種構築し、HLA-A24遺伝子導入マウスを用いて脾細胞からのIFN-gamma産生量を指標にその活性を比較・評価した。その結果、既に確立されているHLA-A24拘束性SAGEペプチドの活性の2〜4倍の強い活性を示す3種の候補ペプチドを見出した。 一方、以前我々が確立した、腫瘍の凍結融解処置後にCTLエピトープペプチドで刺激した樹状細胞を腫瘍内投与する免疫療法を活用し、マウス悪性黒色腫B16-F10モデルを用いて、この腫瘍細胞に発現するいくつかの腫瘍抗原のH-2^b拘束性ペプチドの抗腫瘍活性を比較した。その結果、B16-F10にはいずれの腫瘍抗原も同等に発現しているが、内因性レトロウイルスペプチドを用いた場合に最も高い抗腫瘍効果が誘導され、それ以外の各ペプチドとの混合併用により、各々の単独効果を強く増強することが分かった。現在、その抗腫瘍免疫メカニズムについて詳細に解析している。 さらに、癌細胞におけるERV発現の意義を解明するため、マウス内因性レトロウイルスに特異的なsiRNAを用いて、腫瘍細胞の機能的変化を解析した。現在までに、その発現が癌の悪性形質に深く関与している可能性を示唆するデータが得られている。
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