2010 Fiscal Year Annual Research Report
ブドウ球菌エンテロトキシンによる嘔吐機構の病態生理学的解析
Project/Area Number |
19590444
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
杉本 央 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (20142317)
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Keywords | 食中毒 / ブドウ球菌 / エンテロトキシン / 消化管蠕動運動 / パターンジェネレーター |
Research Abstract |
ブドウ球菌食中毒症は毎年夏季を中心に多数の患者が報告される重要な消化器疾患である。主症状は激しい嘔吐であるという特徴を持つにもかかわらず、その病態の解明はほとんど進んでいない。平成19年度から21年度にかけての研究を通じて、フィールド電気刺激(frequency : 10-500Hz, duration : 0.5msec, intensity : 10-40volt, 10-100tr4ains)に対するBALB/cマウスの小腸の張力応答は多相性を示すこと、全ての小腸領域において刺激開始後約1秒後にpeakを持つ早い収縮応答とそれに続く短い弛緩の後刺激開始後約2.5秒後にpeakを持つ第二の収縮応答が見られることを見出した。またブドウ球菌エンテロトキシンA(1μg/ml)を組織液に添加すると第二の収縮応答の張力に著しい増大が認められた。この第二収縮応答は、モノアミン系の興奮性伝達物質によって惹起されているものと推察されたが、誘発収縮張力と毒素濃度の間には用量依存関係はなく、Auerbach神経叢の神経活動にも明確なパターン変化は見られないことが解った。平成22年度においては、より単純な中枢神経系パターンジェネレーター(CPG)として、ザリガニの遊泳脚CPG活動に焦点を絞って毒素作用の解析を行った。その結果、同一神経節におけるpower strokeとreturn strokeのタンデム活動および左右のpower strokeの同期性、更には神経節間の活動位相のずれ、のいずれにおいても毒素濃度1E-59/mlにおいても明瞭な変化を認めることはできなかった。以上の結果よりブドウ球菌エンテロトキシンは中枢神経系におけるCPG活動に対してはほとんど影響することなく、蠕動運動に関するPG活動にのみ作用する極めて特異な作用を有することが明らかになった。
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Research Products
(4 results)