2007 Fiscal Year Annual Research Report
高齢者と家族の「呼び寄せ介護」をめぐる困難の把握と支援プログラムの開発
Project/Area Number |
19590622
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
斎藤 民 The University of Tokyo, 大学院・医学系研究科, 助教 (80323608)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
甲斐 一郎 東京大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (30126023)
高橋 都 東京大学, 大学院・医学系研究科, 講師 (20322042)
久田 満 上智大学, 総合人間科学部, 教授 (50211503)
田高 悦子 横浜市立大学, 医学部, 教授 (30333727)
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Keywords | 高齢者 / 転居 / 呼び寄せ老人 / ニーズ / 介護 |
Research Abstract |
平成19年度は、主に資料収集と文献レビューを実施した。 大都市近郊において「呼び寄せ老人」が高齢転居者に占める出現割合は20〜50%と少なくないが、その割合は調査により異なっていた。その理由として、対象地域の違いとともに「呼び寄せ老人」の定義の違い、すなわち単に子との同近居を目的として転居する場合と、健康不安や配偶者との死別を契機に転居し子と同近居を開始する場合とが混在しでいることが挙げられた。 日本では、「呼び寄せ」を生じさせる要因に関する実証研究はほとんどみられず、地域特性として人口密度増加率の高さが報告されるのみだった。個人特性との関連を検討したものはみられなかった。「呼び寄せ老人」の転居後の適応やその関連要因に関しては、いくつかの研究がみられた。転居後の適応には、転居後の生活様式とともに、転居前の準備が関連することが指摘されていた。しかしいずれも転居後の思い起こしによる横断研究であり、調査対象者の代表性に限界がみられた。また家族への支援の重要性が指摘されているものの、その負担に関する研究はみられなかった。 一方、海外でも、日本の「呼び寄せ」に該当すると考えられる、子や親族からの支援を求めての移動(kinship move)が報告されていた。こうした転居を引き起こす要因に関する縦断的研究では、手段的日常生活動作能力の低下や配偶者との死別、住宅非所有、前住地における居住期間の短さが指摘されていた。ただし、受け入れ側である子の特性は考慮されていなかった。「呼び寄せ老人」の適応に関する研究は調べた限りみられなかった。 以上から、高齢者と子の特性を考慮した縦断的研究において「呼び寄せ介護」の予測要因を捉えること、「呼び寄せ老人」と家族のニーズを代表性のある標本で把握すること、適応の関連要因を転居後のみならず転居前要因から明らかにすることが重要であることが示唆された。
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