2007 Fiscal Year Annual Research Report
GABAの胃癌細胞増殖作用およびその産生酵素の消化器系癌組織における発現様式
Project/Area Number |
19590739
|
Research Institution | Osaka Medical College |
Principal Investigator |
前村 憲太朗 Osaka Medical College, 医学部, 講師 (50281506)
|
Keywords | γ-アミノ酪酸 / KATO-III / 細胞増殖 / MAPキナーゼ / サイクリンD1 |
Research Abstract |
γ-アミノ酪酸(GABA)は成熟哺乳動物の中枢神経系における主要な抑制性神経伝達物質であるが、非神経系末梢組織及び癌組織にも存在しており神経伝達以外の機能を有していると考えられる。本研究では、GABAによる胃癌細胞株KATO-III細胞の増殖促進効果につき検討し、以下の結果を得た。KATO-III細胞は、(1)GABA_A受容体のサブユニットを複数種発現しているが、GABA_B受容体のサブユニットの発現は見られなかった(2)GABAの合成酵素の発現およびGABAの産生を認めた(3)GABAの添加にてBrdUの取り込み実験で有意な増殖促進作用がみられた(4)GABA_A受容体アゴニストにても増殖促進効果がみられ、これはGABA_A受容体アンタゴニストの投与で阻害された。このGABAによる細胞増殖のメカニズムを調べる目的で、主要なシグナル伝達系であるMAPキナーゼの活性化程度をウエスタンブロッティング法にて検討したところ、GABA投与でERK:、JNK、p38のうち特にERKのリン酸化が誘導されていることが判明した。またGABA投与によりサイクリンD1の発現増強を認めた。これらのことを総合的に考えると、胃癌細胞株KATO-III細胞は自らGABAを産生しオートクライン的にGABA_A受容体に作用することにより、増殖を促進していると考えられた。またGABA_A受容体を介する細胞増殖効果はMAPキナーゼ(ERK)の活性化さらにはcyclin D1の発現増強によるものと考えられた。GABAの非神経系組織における機能はまだ十分には解明されておらず、本研究および今後の研究でGABAによる胃癌細胞の増殖促進というGABAの新しい機能の解明につながると考えられる。
|
Research Products
(4 results)