2007 Fiscal Year Annual Research Report
肝疾患における遺伝子プロモーターのメチル化不安定性の解析とその臨床応用
Project/Area Number |
19590761
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
西田 直生志 Kyoto University, 医学研究科, 助教 (60281755)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西村 貴文 京都大学, 医学研究科, 助教 (40378732)
福田 善弘 京都大学, 医学研究科, 教授 (50127130)
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Keywords | 肝癌 / メチル化 / C型肝炎 / B型肝炎 / 加齢 / 慢性炎症 / β-カテニン |
Research Abstract |
本年の検討では、計180例の肝組織(肝炎ウイルス陰性の組織学的正常肝;22例、肝癌の非癌部肝組織77例、肝癌組織81例)を用い、肝癌と非癌部肝での21座位メチル化定量値より、癌部でメチル化レベルが有意に高い19座位を抽出し、それらのメチル化レベルを正常肝、非癌部肝組織、肝癌部で比較し、また肝炎ウイルスマーカーとの関連を検討した。メチル化の定量に用いたCpG部位は、既報、あるいは肝癌細胞株を用いたスクリーニングにより、その部位でのメチル化レベルが遺伝子発現と相関することを確認した。<結果>各ステージの肝組織のメチル化の状態により、前述の19座位を3つのグループ(Group-1,-2,-3)に分類した。すなわち正常肝、非癌部肝組織、肝癌でいずれもメチル化が認められるCpG座位をGroup-1座位(7座位)、正常肝ではメチル化が認められないが、非癌部肝組織、肝癌でメチル化が認められる座位をGroup-2(5座位),肝癌で特異的にメチル化を受けている座位をGroup-3(7座位)と分類した。正常肝組織におけるGroup-1のメチル化レベルは年齢と相関した(r=0.65-0.44)。非癌部肝組織では、正常肝と比較しGroup-2のみならずGroup-1のメチル化レベルも高値であった。特に3種のGroup-1座位(SOCS1, RASSF1A, APC)と3種のGroup-2座位(CDH1, RUNX3, RIZ1)ではHCV陽性の非癌部において、正常肝より有意にメチル化レベルが高値であった。一方HBV陽性肝癌では1座位(SOCS1)のみで正常肝と比較してメチル化レベルが高く,ウイルス陰性の非癌部では正常肝と比較してメチル化が高い座位は認められなかった。肝癌部ではすべての座位において高レベルのメチル化が認められたが、HCV陽性肝癌では、陰性例と比較しGroup-3座位でのメチル化レベルが有意に高く(p<0.0001)、また肝癌における広範囲・高レベルのメチル化はβ-カテニン変異と強く相関した(p<0.0001)。この結果より、正常肝においても、一部のプロモーターで加齢に従ってメチル化が出現し、また非癌部肝組織、肝癌と進行するに従って、段階的にメチル化が進行する。またHCV感染はこのプロセスを加速させると考えられた。
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