2007 Fiscal Year Annual Research Report
慢性腎不全で加速される重症心血管疾患発症の分子機序の解明と新しい治療法の開発
Project/Area Number |
19590828
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
上村 史朗 Nara Medical University, 医学部, 講師 (80232792)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
斎藤 能彦 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (30250260)
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Keywords | 腎不全 / 再生医学 / 心血管 |
Research Abstract |
胎盤成長因子(PLGF)が属するVEGFファミリーのサイトカインは強力な血管新生作用を有しており,動脈壁中のvaso vasorumの新生を介して,動脈硬化の進展に促進的に作用する.一方,PLGFの受容体である,Flt-1のalternative splicingで産生される血中の可溶性Flt-1(sFlt-1)は,これらのサイトカインの生物活性を抑制的に制御していることが知られている.そこで,われわれは,予備的な検討によって,sFlt-1が主に腎臓から産生されること,また維持透析患者においてsFlt-1の血液濃度が低下している所見を見出した.本年の検討では,まず冠動脈疾患306例を対象として,腎機能障害の程度と血中sFlt-1の関連性,sFlt-1と冠動脈硬化の重症度との関連性を検討した.その結果,sFlt-1は腎機能障害が中等度以上(GFR30未満)の症例において,腎機能正常群に比して有意に低下することを見出した.さらに,sFlt-1濃度は冠動脈病変枝数およびGensini scoreと負の相関関係を示した.さらに,一部の症例で腎生検組織中でのsFlt-1遺伝子発現と腎機能障害の程度を比較したところ,腎でのsFlt-1遺伝子発現は腎機能障害進展に伴って低下することが明らかになった.以上の成績は,腎臓から産生されて全身循環に放出されるsFlt-1は,腎機能低下に伴って減少すること,sFlt-1の低下に伴って冠動脈疾患の重症度が増大することを示しており,sFlt-1が腎不全患者における動脈硬化性疾患発症の分子機序に深く関与していることを示唆している.次年度においては,この知見に基づいてマウス腎不全モデルを用いた基礎的実験を行って検討を進めたい.
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Research Products
(3 results)