2008 Fiscal Year Annual Research Report
慢性腎不全で加速される重症心血管疾患発症の分子機序の解明と新しい治療法の開発
Project/Area Number |
19590828
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
上村 史朗 Nara Medical University, 医学部, 講師 (80232792)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
斎藤 能彦 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (30250260)
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Keywords | 腎不全 / 再生医学 / 心血管 |
Research Abstract |
慢性腎臓病(CKD)は心血管病(CVD)の独立した危険因子であるが、 CVDの発症に係わる分子機序は明らかではない。本研究では動脈硬化進展作用を有する可溶型Flt-1(sFlt-1)に着目し、 CKD患者におけるこれら分子の動態とCVDとの関連性を解析した。方法;冠動脈造影検査を受けたCVD患者329例を対象としてPIGFとsFlt-1濃度を腎機能別に評価した。また腎生検を受けたCKD患者65例の腎組織でのsFlt-1 mRNA発現を検討した。さらに、5/6腎摘によりCKD合併ApoE-KOマウスモデルを作成し、 CKDの動脈硬化進展に及ぼす影響とsFlt-1投与による治療の可能性を検証した。結果;CVD患者血中sFlt-1濃度およびCKD患者腎組織中sFlt-1 mRM発現量は腎機能低下に伴って共に有意に減少を示した。腎静脈血中のsFlt-1濃度は大動脈、冠静脈洞、肝静脈に比して有意に高値であり、動脈血中濃度と有意な正相関を示したため、腎でのsFlt-1産生が血中濃度の規定要因と考えられた。またCVD患者の血中PIGF/sFlt-1比は腎機能障害の進展に伴って上昇し、さらに冠動脈病変枝数と正相関を示した。5/6腎摘により作成したCKD合併ApoE-KOマウスにおいて、血中sFlt-1はコントロールApoE-KOマウスに比し有意に低値、また腎組織中のsFIt-1 mRNA発現量は有意な低下を示した。PIGF/sFlt-1比はCKD合併ApoE-KOマウスで有意に高値であった。 CKD合併ApoE-KOマウスではコントロールApoE-KOマウスに比し胸腹部大動脈およびバルサルバ洞内の動脈硬化プラーク面積が有意に増大、バルサルバ洞プラーク内へのマクロファージ浸潤も有意に増大していた。リコンビナントsFlt-1タンパクを、12週齢から22週齢まで週3回の腹腔内反復投与を行ったところ、プラーク面積はsFlt-1投与群でPBS投与群に比し有意に退縮し、さらにバルサルバ洞プラーク内へのマクロファージ浸潤も有意に減少した。総括;腎機能障害時のsFlt-1産生低下はPIGF活性の上昇を介して、動脈硬化の進展に寄与すると考えられた。さらにマウスに対するリコンビナントsFlt-1投与が腎機能低下に関連する動脈硬化巣の進展を抑制したことより、 sFlt-1は心腎連関の分子機序に係わる重要な因子であると考えられる。
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Research Products
(5 results)