2008 Fiscal Year Annual Research Report
気分安定薬による臨床効果と細胞内イノシトール枯渇の関連性
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19591386
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
大西 哲生 The Institute of Physical and Chemical Research, 分子精神科学研究チーム, 研究員 (80373281)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉川 武男 独立行政法人理化学研究所, 分子精神科学研究チーム, チームリーダー (30249958)
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Keywords | 双極性障害 / 気分安定薬 / イノシトール枯渇仮説 / IMPase / リチウム / モデルマウス / IMPA1 / IMPA2 |
Research Abstract |
気分安定薬、とりわけリチウムの作用機序と脳内細胞内イノシトールの枯渇の関連に注目し、主にモデルマウスを用いた解析を行った。具体的には、細胞内でイノシトールを生成するための主要な経路である、イノシトールモノリン酸の脱リン酸化を触媒するIMPaseをコードする二つの遺伝子Impa1,Impa2の機能欠損マウスの表現型を観察した。IMPaseはリチウムの直接の標的であると想定されている酵素でもあり、実際in vitroでImpa1,Impa2タンパク質の酵素活性はリチウムにより阻害される(Ohnishi et al.JBC,2007など)。Impa1機能欠損マウスに関しては、ほとんどが出産直前あるいは出産直後に死亡したが、下あごの形成不全や胸骨-肋骨接合部の非対称性、心臓の低形成といった極めて特徴的な表現型をしめし、少なくとも胎生期においてはImpa1によってイノシトールモノリン酸から供給されるイノシトールが、正常な発生に必須の役割を果たすことが判明した。このことは、リチウムを服用した妊婦から、心奇形を持つ子供が高頻度で産まれるという報告との関連で興味深い。なおImpa2 KOマウスは一見正常に成育し、各種行動試験においても際だった異常を示さなかった。これらの結果やいくつかの状況証拠から、少なくとも脳内ではImpa2経路は主要なイノシトール合成経路ではなく,Impa1経路が重要であると予測された。Impa1機能欠損マウスに関しては、妊娠期に母親の飲み水にイノシトールを供給(離乳時まで)すれば、その致死性を回避できることが判明した。本マウスは、飲み水にイノシトールを混入するかどうかにより、ある程度自由に体内イノシトール濃度をコントロールでき、今後のイノシトール枯渇と行動の関連を研究するに当たって、重要なツールとなると期待される。これらの研究成果は、鋭意論文としてとりまとめ中である。
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