Research Abstract |
1) 神経刺激部位の同定 右上肺静脈,上大静脈の合流部辺縁の心外膜脂肪組織を電気刺激により,ほぼ心停止に近い1-3bpmの超徐脈が誘発された.さらに左上肺静脈-左房接合部上縁の刺激でも同様に心停止が得られ,同時刺激により確実に心停止が再現性をもち得られることが判明.刺激閾値は周波数25Hz,出力10V,パルス幅2msが最も確実であり,また周波数を10Hz以下にすると心房細動が誘発されることも突き止めた.心拍動は刺激により心停止の状態となるが,刺激停止とともに直ちに心拍動を再開した. 2) 心停止許容範囲の検討 実験2では30分の心停止で,心機能の回復が著明に低下したため,実験計画を変更し15分,30分心停止の2グループとした. 1. 心機能:15分心停止グループでは,刺激停止後一過性の徐脈となり,術前の心拍数,血圧回復までに約4分かかることが判明.また30分心停止グループでは,心停止中止後,自己脈は出るが,10分でも術前の心拍数,血圧には回復せず,カテーコールアミン,ペースメーカーが必要であった. 2. 心筋酸素飽和度:連続モニターによる心筋酸素飽和度は,心拍動時82%が,心停止とともに92%に2分以内で上昇,10分間は90%以上を維持するが心停止後13分頃より,徐々に低下し始め15分で80%になることが判明,さらに30分グループでは,最終的に平均68%まで低下することが判った. 3. SPYシステム:SPYシステムでは15分,30分の心停止状態で比較検討したが,現在のところ,画像で有意差が判定できるようなデーターは得られていない. 本神経刺激電気心停止法では,現時点の結果から15分が,臨床応用できる限界と判断する.
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