Research Abstract |
リンガライズド・オクルージョン,フルバランスド・オクルージョンの両咬合様式ともに長所・短所があり,咬合様式の選択にあたっては,研究者,臨床家の間で意見が分かれているが,概ね顎堤条件によってどちらを選択するか決定しているのが現状である.しかし,臨床では,顎堤条件ばかりでなく,生活習慣,食習慣,口腔機能,性別,個性,QOLなどの条件が複雑に存在し,これらを考慮するとどちらの咬合様式を選択するか明確な指標がなく,迷うことが多い.これまでの報告では,QOLを含めた患者主体の評価がほとんどないのが現状である.そこで,QOL,義歯満足度などの患者の主観的な評価と栄養状態,咀嚼状態,咬合など客観的評価を総合的に判断し,咬合様式選択の指標を得ることとした. 本年度の実験計画では,被験者を徳島大学病院歯科を受診する上下無歯顎患者10名(男性:5名,女性:5名)とする予定であった.しかし,実験期間が少なくとも20ヶ月であることが要因で被験者が思うように集まらなかった.また,上記と同じ理由で途中リタイヤ(病気等のため)する患者も数名に上り,結果,現在の被患者は男性:1名,女性:3名である.義歯長期使用後の評価を予定しているが,被験者の確保のためには,期間の変更等を検討すべきであると考える. 被験者数が少ないので統計学的な検討には至っていないが,1カ月間使用した後の,口腔関連QOL(Oral Health Impact Profile-Japanese version(OHIP-J))では,両咬合様式に差は認められない.今後,実験期間の短縮によって被験者数を増やし,詳細な検討を行う予定である.
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