2009 Fiscal Year Annual Research Report
正常唾液腺培養細胞の維持と放射線照射唾液腺への移植による唾液腺再生の試み
Project/Area Number |
19592331
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Research Institution | Hyogo College of Medicine |
Principal Investigator |
野口 一馬 Hyogo College of Medicine, 医学部, 講師 (50309473)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浦出 雅裕 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (70104883)
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Keywords | 唾液腺 / 放射線 / 口腔乾燥 / 再生医療 |
Research Abstract |
放射線治療やシェーグレン症候群などにより唾液腺の萎縮が引き起こされると、日常的に粘膜の炎症を引き起こし、慢性的な疼痛、会話や食事の障害を訴える。現状では、唾液様の成分を外部から補う人工唾液や残存する腺組織からの分泌を促進する各種薬剤が用いられてきたが、対症療法に過ぎない。そこで、唾液腺そのものの修復もしくは再生を目指して正常唾液腺細胞を用いた実験が試みられている。正常唾液腺細胞は腫瘍細胞と異なり、長期間培養することは非常に困難である。そこで、本研究は正常唾液腺培養細胞の長期培養を目指した培養法の開発と放射線照射後の萎縮腺組織への唾液腺細胞の移植による再生治療の可能性を検討することを目的としている。ヒト顎下腺より得られた培養細胞は、従来の培養条件での継代を続けていくと8継代目になると細胞増殖速度が急速に低下し死滅する。これは正常細胞を培養する際にいわゆる「カルチャーショック」が生じ、p16が増加した結果、RB経路が停止する細胞老化であることを明らかにした。通常の培養ではこの障害を克服することは難しいため、われわれは、新たにヒト正常唾液腺培養細胞にCDK4, cyclinD1, human Telomerase Reverse Transcriptase(hTERT)の3つの遺伝子を導入することで不死化に成功し、HSalEC/CDK4CD1hTERTと命名した。本培養細胞は正常唾液腺培養細胞と同様に、低カルシウム無血清培地では紡錘形に増殖するのに対し、カルシウムの濃度を1.0mMとすると細胞形態が敷石状に変化することを確認している。本培養細胞を用いて放射線照射により唾液腺を破壊したヌードマウスに対し移植を試みたが、唾液腺は再生しなかった。そのため、ヒトの放射線治療後の唾液腺に対して再生のニッチとなりうるかを免疫組織学的に検討したところ、放射線照射後に生じた唾液腺の繊維化組織には唾液腺細胞が増殖するために必要なEGFが極めて減少しており、唾液腺細胞を再生させるためのニッチとしては不十分であることが確認された。放射線照射によって破壊された唾液腺の再生は困難であることは確認できたが、逆に唾液腺の新生や加齢による唾液腺の老化であればニッチが保存されているため可能ではないかと考え、引き続き研究を続けていきたいと考えている。
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