Research Abstract |
生理的口臭患者における口臭生成機序解明のため, まず, その背景となる生活環境要因に着目して統計解析を行った。徳島大学病院口臭外来を受診し, 口臭検査を実施した18-59歳の244名を対象に, 生活習慣や舌苔沈着量と口臭との関連性を調べた結果, 舌苔沈着量は口臭の存在と統計学的に有意な関連性を示した。一方, 中等度以上の舌苔沈着の認められる患者で, 自分の舌苔の存在を認識している者は半数以下であり, 舌苔を認識していても舌清掃を行っていない者が40%以上存在した。喫煙習慣との関連性では, 喫煙者の口臭外来を受診する割合は全国調査値の喫煙者割合の半数以下であり, 喫煙者は自分の口臭が認識できていない可能性が示唆された。また, 真性口臭症患者では喫煙経験(ブリンクマン指数)が舌苔形成と有意な関連性を示すことが明らかとなった。 生理的口臭を含む真性口臭症患者(18名)から得られた唾液検体を用いて, シスタチンCの存在をWestern immunoblotting法にて, 半定量的に測定した。それらの結果を用いて, リアルタイムPCRによる唾液および舌苔中の総菌数, Porphyromonas gingivalis(P.g.)およびFusobacterium mucleatum(F.n.)の菌数測定結果や他の口臭に関与する臨床データとの関連性を調べた。スピアマンの順位相関係数検定の結果, 唾液中のシスタチンC量はハリメーター値(揮発性硫黄化合物量 : VSC)との問に有意な逆相関(相関係数-0.53, p<0.05)を認め, 特にガスクロマトグラフィーにて測定したメチルメルカプタン量との問の逆相関(相関係数-0.48, p<0.05)が確認された。一方, 2名の生理的口臭患者に対してブラッシング指導, PMTCなどを行い, 介入前後の唾液検体を採取して口臭産生の基質となる含硫黄アミノ酸量の変化を調べた。その結果, 口臭の改善した2名ともcystine量に大きな変化は認められなかったが, 1名は介入後のmethionine(Met)量が大きく減少した。メチルメルカプタンはMetから産生されることや唾液中のシスタチンCが口臭産生抑制に深く関与することから, これらの結果は唾液中のMet測定およびシスタチンC測定が口臭症治療のバイオマーカーとなる可能性を示唆するものである。 また, カナダ・ラバル大学より供与を受けた高分子クランベリー抽出物を用いてP.g.およびF.nの産生する硫化水素およびメチルメルカプタン産生量への影響を調べた。それぞれの口臭関連細菌培養液に抽出物を添加した結果, P.g.の産生するメチルメルカプタン産生を部分的に抑制する傾向が認められ, クランベリーの口臭ケアへの応用の可能性が見い出された。
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