2009 Fiscal Year Annual Research Report
認知症高齢者の施設入所を決断するまでの家族介護者の心理的変化
Project/Area Number |
19592611
|
Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
櫻井 美代子 Jikei University School of Medicine, 医学部, 教授 (20246408)
|
Keywords | 認知症高齢者 / 家族介護者 / グループホーム |
Research Abstract |
3年間の研究期間の最終段階に入った本年度は、データの分析を行い日本老年看護学会と日本認知症ケア学会に研究成果を報告した。老年看護学会ではグループホームに入所を決断するまでの家族介護者の思いに焦点を当て、日本認知症ケア学会では都市部と農村部の地域性が家族介護者の決断にどのような影響を与えているのかに焦点をあてて発表した。対象10事例のワークシートをもとにストーリーラインと概念図を作成した結果、以下のことが明らかとなった。 1.主介護者である娘は認知症の親を自宅で介護することを社会規範、あるいは使命感と考えている。しかし、症状の進行に伴い在宅介護の限界感と施設に預けることへの罪悪感との葛藤の中で決心がつかないまま在宅介護を継続している。一方、日々の介護プロセスの中で親と過ごす濃厚な時間が増えることによって、昔の思い出を共有する機会が与えられ、苦労をしながら自分を育ててくれた親の人生について初めて考えるようになっていく。この心理的変化が、認知症の親を全人的に受け入れるようになり、「人として個人が尊敬されるグループホームへの入所」は親を見捨てるのではないという自信に繋がり、最終的に施設入所を決断するにいたっていた。 2.都市部と農村部との比較では、介護者の心理的変化に大きな違いは見出せなかった。しかし農村部では地縁社会ゆえのしばりが在宅介護の限界感に拍車をかけているのではないかと思われた。 3.親の人生を自分に転化することが不十分のままグループホームへの入所を決心した家族は、親が入所後も罪悪感を強く引きずっていることが分かった。このような家族の罪悪感を少しでも薄め、認知症である親もそして家族もともに自分らしい人生を過ごせるような支援が、これからの家族支援の課題であると考える。
|
Research Products
(2 results)