Research Abstract |
折紙を基に,あるいは「折る」ことや「折り畳む」ことを原理として,構成される幾何オブジェクトに関する学問の基礎理論の構築をはかり,得られる知見を理工学へ適用することを目的とする研究を推進した.具体的には,藤田の折紙公理の論理的,代数的な解釈のアプローチを用いて,「折れる」ことの概念を次のような手順で拡張し,精密化した.(1)折紙を幾何制約問題の求解としてとらえる.(2)幾何制約問題を,一階述語論理で定式化する.(3)代数的な解釈により,折紙を多項式系で表現する.(4)定理証明系や,代数的および数値的求解系を用いて,定式化に用いた公理系の完全性と健全性を検証する.完全性,健全性の概念は研究を進展させることにより,厳密な概念へと導く.(5)効率面からみた公理系の再吟味を行う.この研究では,抽象折紙という数学的な構造を導入し,折紙を面の集合とその集合上で定義される二つの二項関係で定義した.折紙を構築することは,抽象折紙の書き換え列として定義できる.書き換え列を生成する際に得られる多項式の集合が,折紙の幾何的な性質を表現しており,これに対して,グロブナ基底の計算やシリンダ分解を行うことにより,折紙の幾何的な性質を計算論的に検証することができた.さらに,計算機での実装にむけて,グラフ理論を駆使した形式化を行いつつ研究を推進している.この研究と並行して,折紙を可視化し,幾何学的な性質を調べるために,EOS(E-Origami System)と呼ぶ計算折紙システムの開発を更に進め,平成21年度以降の計算折紙論の研究をさらに進めるための環境を整備した.
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