2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19650225
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
森村 成樹 Kyoto University, 野生動物研究センター, 助教 (90396226)
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Keywords | 動物園 / 環境教育 / 環境エンリッチメント / 展示技法 / 教育効果 |
Research Abstract |
本年度は、国内5ヶ所の動物園において飼育されている哺乳類2種(チンパンジーとヒグマ)の行動観察、展示形態についての調査を実施した。また、教育効果についての客観的な指標とするため、哺乳類2種の展示場前に来園者が滞在する時間を測定した。環境エンリッチメントを実演する教育プログラムを実施しているときとしていない場合とで滞在時間を比較した。教育プログラム実施時、環境エンリッチメントによって対象動物の活動性は高まった。滞在調査は2200人の来園者を対象とした。その結果、ヒグマよりもチンパンジーで教育プログラム実施時の滞在時間が大幅に引き延ばされた。また、滞在する来園者数は動物種の効果よりも、大きな通路に面していたり、分かりやすいといった展示場の配置の効果を強く受けた。これらのことは、施設の構造や配置は来園者数に、動物への関心は滞在時間によって評価できることを示している。本結果から展示技法は来園者の数のみで評価することができず、滞在時間のような観客の行動についても加味する必要があることが示唆された。動物園の教育的な役割を高めるには、滞在時間を引き延ばすような展示が必要と言えるだろう。国内の動物園で来園者2200名を対象とした調査はほとんど例がなく、21年度中に学術論文として報告する予定である。また、20年度の成果にもとづき、動物種、動物飼育展示場の構造、来園者の園内空間利用、展示場の滞在時間に関する行動調査を実施し、さらなる知見の集積に務める。
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